研究課題/領域番号 |
18K18296
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
佐伯 英子 法政大学, 人間環境学部, 准教授 (50771705)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 生殖 / ジェンダー / 人口妊娠中絶 / リプロダクティブ・ライツ / 身体観 |
研究実績の概要 |
本研究は、胎児の「人権」が憲法の改正により保証され人工妊娠中絶が禁止された一方で規制緩和に動くアイルランドと、1973年に合法化されたものの中絶反対派の政治的影響が強まるアメリカ合衆国に焦点をあて、人工妊娠中絶に関する世論の形成と政治的決定に至る過程、及びその中で語られる胎児観とリプロダク ティブ・ライツに関する認識を明らかにするものである。
2020年度は、主に2019年にアイルランドで行ったインタビュー調査で得られたデータの分析と文献調査、活動家たちがSNSなどのオンライン上で行ってきた活動の分析を行なった。どちらの分析においても、個人の経験やそれに関する語り(ナラティブ、ストーリーテリング)が、社会変革の過程にどのように位置付けられるかということを中心に検討した。新聞社(Irish Times)が行なったアンケート調査により、友人や家族といった身近な人との対話が2018年の国民投票においてどちらの票を入れるかという決定に大きく影響したことが明らかになっているが、本研究の分析でもそれを裏付ける内容のコメントが見出された。また、匿名で語ることのできるSNSが、安全に対話を行うことのできる一つの場を提供し、運動において重要な役割を担っていたこともわかった。アイルランドにおいて中絶は大きなスティグマを伴う経験であったが、これらの運動を通して、自らの経験の共有が連帯に繋がる可能性、また社会変革の中の1人のアクターとしてのアイデンティティの確立や、経験の意味付けを更新することの可能性も見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
COVID-19の影響により、アイルランド、アメリカ共に渡航ができなくなったことから、予定していたインタビュー調査を行うことができず、調査の進捗には遅れが出ている。
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今後の研究の推進方策 |
アイルランド、アメリカ共に渡航、調査が可能になり次第、実施する。それまでの間は、新聞記事やSNSへの投稿の収集、コーディング、テキスト分析を引き続き行う。渡航が可能になるまでは、 かなりの時間がかかる可能性も高いため、zoom等のオンライン会議ツールを利用してのインタビューの依頼も検討している。アイルランド調査に関しては、学会発表と学術誌での発表を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19により、アイルランド及びアメリカへの渡航が不可能となり、計上していた旅費を使うことができなかった。渡航が可能になり次第、旅費として使用する。
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