研究課題/領域番号 |
18K18296
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
佐伯 英子 法政大学, 人間環境学部, 准教授 (50771705)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 生殖 / ジェンダー / 人工妊娠中絶 / リプロダクティブ・ライツ / 身体観 |
研究実績の概要 |
本研究は、胎児の「人権」が憲法の改正により保証され人工妊娠中絶が禁止された一方で規制緩和に動いたアイルランドと、1973年に合法化されたものの中絶反対派の政治的影響が強まるアメリカ合衆国に焦点をあて、人工妊娠中絶に関する世論の形成と政治的決定に至る過程、及びその中で語られる胎児観とリプロダクティブ・ライツに関する認識を明らかにするものである。
2022年度も新型コロナウィルス感染拡大の影響により、渡航が困難であったため、予定していた現地でのインタビューは実施ができなかった。一方で、オンラインのツールを使用して、現地のインフォーマントとコミュニケーションを取り、インタビューを実施できたことは研究において有意義な進展であった。2022年度は主に、中絶に関する経験を人々がオンライン上でどのように語り、そしてその語りが社会変化にどのような影響を及ぼしてきたのかということを中心に検討し、論文を執筆した。また、リプロダクティブライツに関する規制が厳しくなるアメリカ合衆国においては、法制度の変化のプロセスと、それに対する市民の反応や抵抗について情報を整理し、分析した。保守的であると考えられていた地域においても、中絶の禁止や厳罰化が必ずしも求められているわけではないこと、医療従事者や団体職員、活動家たちが様々な方法を使って中絶への安全なアクセスを守ろうとしてきたことがわかった。どちらの国においても、中絶の脱スティグマ化を目指す中で、中絶を人生におけるひとつの「選択」として捉えるだけでなく、ヘルスケアの一部、人権の一部として位置付けていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の影響により、2022年度もアイルランド、アメリカ共に渡航ができなかったために、予定していたインタビュー調査を現地で行うことができなかったことが理由である。一方で、オンラインツールを使ったインタビューとSNSの分析は進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
渡航してのインタビュー調査を実施する。また、新聞・雑誌記事やSNSへの投稿の収集、コーディング、テキスト分析を継続する。研究結果については学会発表と学術誌での発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19により、アイルランド及びアメリカへの渡航が不可能となり、計上していた旅費を使うことができなかった。渡航が可能になり次第、旅費として使用する。
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