研究課題/領域番号 |
18K18299
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研究機関 | 金城学院大学 |
研究代表者 |
畠山 正人 金城学院大学, 国際情報学部, 准教授 (50635240)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 男女共同参画 / ジェンダー / 中山間地域 / 農山村 / 農村社会 |
研究実績の概要 |
現代農山村の地域再編において女性の地域社会への参画が強調されて久しいが、その過程と方途は未だ明らかにされていない。そこで本研究では、地域の女性と男性とを媒介するネットワーク(媒介的ネットワーク)の発生と発展という現象を想定し、以下の3点を明らかにすることで、上記の問題の解を見出すことをねらいとした。(1)社会ネットワーク分析の知見を応用し、媒介的ネットワークの存在を析出すること、(2)女性(または地域の中で周縁化された人材)と媒介的ネットワークとの相互作用、(3)媒介的ネットワークの地域社会全体への影響の可視化の3点である。 2018年度は、愛知県豊田市稲武管区(平成合併前の旧・稲武町)における5件の家族経営者、および6名の女性への構造化されていないインタビュー調査(パイロット調査)および一部地域内(大字内)での10名への半構造化されたインタビュー調査により、上記(1)について明らかにしようと試みた。 調査結果により、地域において社会活動または事業経営を担っている女性が、活動の継続や発展に際して人的ネットワークを利用かつ発展させている傾向が見出された。と同時に、それらの活動に協力的な、あるいは女婿など特殊な経緯で地域に移住した男性層もネットワーク・メンバーとして徐々に参加している傾向が伺えた。またそれらのネットワークには、地域活動に積極的に携わる夫婦関係にある二者や、親子関係にある二者(主に地元居住の親と他出の実子)もおり、メンバーシップが限定されておらず、非常に緩やかな様相も伺えた。 そこで2019年度以降は、上記(2)および(3)について明らかにするとともに、ネットワークそのものの特質にも射程を広げ、研究を行うことを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は、媒介的ネットワークの存在やその形成プロセスを析出することを研究の主眼とした。そこで、愛知県豊田市稲武管区(平成合併前の旧・稲武町)の旧・中心市街地(武節町・稲橋町)および周縁地域(大野瀬町)において調査を実施している。パイロット調査では、旧・中心市街地の店舗経営者家族および女性住民へのインタビュー調査が行われた。またこれをふまえ、周縁地域での住民を対象にした半構造的なインタビュー調査が実施され、地域の女性と男性とによる社会的ネットワークの形成過程とその特質が示された。 以上より、2018年度の研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
上記「現在までの進捗状況」の一方で、2018年度の新たなファインディングスとして、以下の2点が明らかとなった。(1)地域の男女による社会的ネットワークは、地域住民の枠を超えた他出地縁者や地域外関係者に及んでいること、(2)ネットワーク・メンバーの多くは、家父長制的な枠組みを超えて夫婦ともに地域運営の中核的な担い手として活動していること、である。 そこで2019年度以降は、この社会的ネットワークが如何なる媒介的機能を有しているのかを研究する一方、上記の2点の傾向や特徴を捉えていくことも研究の射程としていく。と同時に、2018年度の調査結果を研究成果として整理、公表していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度の調査予定日に、天候不良や調査対象者に喫緊の予定が入る等の不測の事態があり、調査を中止する日が何度かあった。そのため、次年度使用額が生じている。 一方、この間の研究の進展に伴い、研究対象となる社会ネットワークの参加者は当該地域の住民以外に及んでいるという、当初予定していなかった新たな知見が得られた。これにより翌年度、調査対象が調査地域の住民の枠を超えることが予定されているため、この次年度使用額を、そこへのアクセスのための旅費およびその他の費用(通信費等)として使用する。
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