バンチシェイプモニタはハドロンリニアックの縦方向分布を測定するためのビームモニタである。ビームをワイヤに当てて、生成された2次電子を測定することで縦方向分布を得る。しかし、大強度かつ低速エネルギーのビームでは、ワイヤが破断しビームを測定できない。 これを克服するために非破壊型ビームモニタの開発を進めている。ワイヤの代わりに2次電子を生成する機構として、電極とガス導入を採用した。生成した2次電子を輸送するために、電極は複雑な多段電極を採用せず、単一電極を採用した。また、単一電極で電場を平行にするために、製作しやすい構造を考案した。ガス導入は、2次電子生成量を少しでも増やすために採用した。 本年度は、上記の電極とガス導入部の製作を行い、オフライン試験とビーム試験を行った。ワイヤ以外の機器は、J-PARCが保有するバンチシェイプモニタの機器を使用した。オフライン試験では、電極への高圧印加やガス導入等、製作した機器が正しく動作することを確認した。一方、ビーム試験では、2次電子の検出が出来なかった。これは、ワイヤに比べてガスの密度が極めて小さいため、2次電子がほとんど生成されなかったためと思われる。2次電子が検出器まで到達する量は概算で従来のワイヤに比べて約20桁の乖離があることが分かった。 本科研費により、非破壊型ビームモニタを実現するには、ワイヤの代わりとなる機構に加え、従来のバンチシェイプモニタで使用されている2次電子検出機構とは異なる検出機構が必要であることが明確になった。
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