量子ビーム最大の産業応用である極端紫外線(EUV)リソグラフィの利用推進を目指し、EUVレジスト性能をEUV光源に頼らず電子線(EB)によって評価する手法について研究を行った。 一つ目のアプローチである超低エネルギーEB照射装置によるEUV誘起反応機構の解明においては、EUV照射の特徴的な二次電子分布を再現するため100 eV程度のEBを発生させる超低エネルギーEB照射装置の開発を行い、真空ポンプ・真空計などの機器の更新や、集束レンズの調整により様々な照射条件でレジストへの照射が可能になった。実際に超低エネルギーEBを照射したサンプル表面を原子間力顕微鏡により観察し、100 eVのEBの進入長に見合ったナノメートルオーダーの形状変化・物性変化がレジスト表面で確認された。 もう一つのアプローチであるEBとEUVの電子散乱挙動の違いの解明では、EB照射時に顕著な後方散乱電子の影響について電子散乱モンテカルロシミュレーションによる検討を行い、EUVレジスト性能をEBを用いて評価する際に差し引くべき後方散乱電子影響の補正係数を算出した。また、EB描画装置、EUV描画装置を用いて実際にナノパターニングを実施し、原子間力顕微鏡を用いて得られた現像パターンとシミュレーションによる予想パターンの比較を行った。 EBを用いたEUVレジスト性能評価方法の確立させるためには、短パルスEUVをレジストに照射した場合と超低エネルギーEBを照射した場合で反応機構に違いを生じるか確認する必要がある。実際にレジストに対し短パルスEUV照射試験を行い、照射・現像による表面形状変化・物性変化について原子間力顕微鏡やX線光電子分光を用いて解析した。その成果は査読付きのジャーナルに掲載されている。
|