本研究では、ナノ機能空間へのガス吸着脱着過程を明らかにするために、放射光の高エネルギーX線を利用して、空間分解能を向上させた高精度粉末回折データが取得可能なミリ秒程度の時間分解構造計測システムの構築を目指している。本システムでは、一次元半導体検出器を利用してカメラ長220mm程度に設置し外部トリガーと同期させることにより、XRDでの計測時間は最短で10ms程度で可能となった。本年度は、さらに制御系を見直すことで、これまで計測できなかった6連装の半導体検出器間との連動が可能となり、2θ=40°程度の広い回折角の範囲を連続計測できる環境を構築し、これらをガス圧力制御用プログラムへ組み込んだ。また、ガス圧力制御システムを改良し、一定圧を瞬時に印加するガスショットモードと、ガスの流量を調整しながら圧力を掃引過程で連続計測を行う測定手法を開発した。これらの装置を用いて多孔性配位高分子のCu2(pzdc)2(pyz)やホフマン型構造を有する物質について、ガス吸着過程において、酸素や窒素、メタン、CO2ガスなど様々なガス種に対しての構造相変化の系統的な変化の観測に成功した。Cu2(pzdc)2(pyz)においては、ガス導入の約3秒後に細孔方向に特徴的な格子定数の変化を観測に成功した。一方で、Q~35Å-1程度まで計測可能な小型イメージングプレート検出器用の変換プログラムを作成することで問題なく解析を行うことができた。これらの開発した装置、制御プログラムや研究成果の一部は、シンガポールで開催されたアジア結晶学会で発表を行うとともに、学術論文としてJ. Synchrotron rad.誌に掲載された。
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