評価指標の精査に際し、グッドプラクティスのフィードバックを重要視する観点から米国調査を予定していたが、covid-19の影響で2年間順延していた。最終年度の当該年度は本調査が遂行可能となり、先進事例としてシアトル市を対象に戦略的な都市計画手法の一つである「アーバンビレッジ」の戦略構想に基づく土地利用やゾーニング政策に焦点を当て、その実態調査を行った。「アーバンビレッジ」の戦略構想は近隣地区の特性を活かしながら成長促進地区を集約するものであり、Downtown,Northgate,Ballard,FirstHill/Capitol Hill,Othello地区などの計41地区が指定されている。このうち、郊外拠点として位置づけられ、公共交通の主要駅を起点に居住地域が展開されるOthello地区を重点的に調査した。とりわけ、病院や集合住宅の複合施設、教育施設、商業施設や銀行などの金融機関をはじめ、本研究で体系づけた公共・商業特性に位置づけられる評価指標が駅周辺に集約・展開されていることが明らかとなり、郊外拠点の将来像やゾーニング政策に資する知見が得られた。また、シアトル市では、近年「Streatery」といった街路空間を利活用した空間展開が図られているなど、利便性や公共・商業サービスに影響を与える評価指標のみならず、都市魅力やライフスタイルに起因する都市空間の評価指標を構築することも今後の課題となる。研究期間全体を通じて、富山市の地域拠点を主な対象とし、公共交通の利便性、行政・商業サービスといった評価指標をレーダーチャートで明らかにし、多様な世代が生活しやすいエリア、子育て世代が居住しやすいエリア、平均的なバランスを有するタイプなどを示しながら、地理的分布との対応関係を分析し、都市計画マスタープランにおける地域ビジョンとの照合を行うなど、公共・商業機能の誘導などの方策を考察した。
|