本研究では,デザイン思考における代表的なデザイン展開方法の1つであるスケッチに着目し,スケッチによるデザイン展開時の脳活動を測定することにより,デザインに関する方法やツールなどを,定量的に評価する方法を構築するための一助とした. まず,デザイン思考の枠組みとして,分析・発想・評価をヒューリスティックに繰り返すという,これまでに提案されてきた多くのデザイン思考モデルに共通する特徴を抽出した.一方,スケッチに関する調査により,スケッチを用いたデザイン展開は,(1)New generation(新規発想),(2)Reinterpretation(再解釈),(3)Lateral transformation(水平展開),(4)Vertical transformation(垂直展開)の4つに分類できることを確認した.そして,それらをもとに,スケッチによる各種デザイン展開を実施している際の脳活動計測を行い,スケッチを用いたデザイン思考の定量的評価に関する知見を得た.具体的には,新規発想が,他のデザイン展開よりも前頭前野の脳血流を大きく増加させること,そして,その賦活は,単に記憶の利用に起因するものではなく,デザイン思考において重要なアイデアの抽出(発想)とその採否判断(分析・評価)において賦活する部位と対応していることなどの知見を得た.これらの知見に基づき,スケッチ以外の各種デザイン展開とそれに対応する賦活部位に関する実験・検証をさらに進めることにより,デザイン思考に関する方法やツールの定量的評価の実現可能性を示唆した. これらに関する成果は,原著論文2件(うち1件は査読中),国際会議発表2件,国内会議発表4件にて報告された.
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