本研究では、形を見立てやすい「良い形」についての調査とコンピュータによる形状の自動生成手法の検討を行う。特に、研究代表者がこれまで取り組んできた折り紙を題材として、見立てやすい形を自動生成するアルゴリズムや、ユニット折り紙のためのモデリングシステムについて研究した。具体的な内容は以下の通りである。 折り紙の基本的な操作である目印のある折り方(「カドとカドを合わせる」「フチとフチを合わせる」「2つのカドを通るように折る」など)のみを使用して正方形の用紙を折るとき、3回の折りたたみだけでおよそ1500通りの形状を取り得ることがわかっている。ただし、これは折りたたまれた状態として異なる形状の数を示しており、紙の重なり順は異なるがシルエットは同一な形状も複数含まれる。そこで、生成した形状群から合同なシルエットを取り除いてユニークな形状のみを抽出すると、形状がユニーク(折り方もただ一通り)の形は1/3程度含まれることがわかった。残りの形状は複数の折り方が存在し、これらは長方形や正方形などの単純で見立てが難しい形状が多く含まれていた。したがって、このような形状の絞り込みを行うことで特徴的で見立てやすい形を多く得られる可能性がある。また、この合同判定によるユニーク形状の抽出を応用して、折り手順を推定することが容易あるいは困難な折りたたみ形状の設計手法を提案した。 初年度を除きコロナ禍での実施となり、授業資料の整備や保育園の登園自粛などの影響から本事業期間内での十分な研究成果の発表には至らなかった。しかしながら、開発した形状生成アルゴリズムの評価実験は概ね実施でき、論文にまとめる見通しは立った。これ以降の作業量や必要な支出は多くないことから事業期間のさらなる延長は不要であると判断し、本年度を最終年度とした。
|