研究実績の概要 |
全国散り散りになった原発避難者は, 避難者であるというスティグマによって口を閉ざし, 孤立した状 況下で生活をおくっている。 震災前の町の様子や思い出は語られなくなり, 町自体が消滅したかのようになってしまった。次世代に向けた地域の記憶や文化の継承は危機的状況である。 この状況を改善するためには,避難者の語りを積極的に引き出し, アーカイブできるシステムが必要である。 本研究では、バーチャルコミュニケーションを原発避難者のスティグマ解放と地域記憶継承問題のために,浪江町民がどこからでも参加でき, 心の拠り所となるようなバーチャルコミュニティー形成モデルを開発し,第三者も利用閲覧できる新しいタイプのアーカイブシステムを構築することを目指している。 今年度は,昨年度開発した浪江の記憶を共有するためのデジタルカレンダー「ナミエノジカン」(https://namiehours.net/)を使用して浪江町民に対してワークショップ・モニタリングを開始するにあたり,今まで「ナミエノジカン」にアップされたデータを整理してまとめた。それをもとに物語と写真が「ふるさと」を誘発する関係性について分析を行った。これらの調査で得られた写真が物語を誘発することを示すデータを論文として公表し,学会で発表した。また,上記モニタリングを行うために,浪江町民に対する聞き取り調査,および,ふたば未来学園の高校生に向けての写真講座を開催した。2020年2月および3月に「ナミエノジカン」を使用してのワークショップを開催予定であったが、新型コロナウイルス感染防止のため次年度に延期することになった。
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