研究課題/領域番号 |
18K18327
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
辻 泰明 筑波大学, 図書館情報メディア系, 教授 (30767421)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 戦争映像 / 放送番組 / 国際展開 / 映像アーカイブ / インターネット動画 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、第二次世界大戦前後の時期における戦争に関する映像資料の構成と展開を基軸として、日欧米の公共的放送番組アーカイブを調査し、これまでおこなわれていなかった国際比較の観点にたって、それぞれの特性を解明することである。初年度にあたる平成30年度は、Web調査や対象コンテンツの再整理など、本研究における調査研究環境の整備と予備調査を実施した上で、本格的な調査を開始した。 まず、準備段階での調査結果から、日欧米各国の公共的放送番組アーカイブの全体像分析を補完するものとしての事例研究について、その対象となるコンテンツの的確な選定をおこなうことにより、当初計画よりも調査研究を効率的に実施可能であるとの知見を得た。この知見の上に立ち、平成30年度は、海外アーカイブに関しては、アメリカの放送番組・映像資料アーカイブ(NAVCC)において調査および担当者(アーキビスト)へのヒアリングと意見交換を実施した。また、第二次世界大戦期の映像資料を活用した放送番組を定期的に制作している海外の放送局(アメリカRMPBS)を訪問して、放送番組アーカイブと放送局の関係、放送番組への展開の現状、放送局内における映像資料の収蔵体制、映像資料活用番組の制作体制などについて実地調査をおこなった。当該放送局においては、アーカイブの資料映像を活用する際の制作フロー、制作意図とコンテンツの関係性などにつき、番組制作責任者(エグゼクティブ・プロデューサー)へのインタビューも実施した。さらに、予備調査および実地調査の結果を踏まえて、事例分析としてとりあげるコンテンツの選定も開始した。 上記の実績と成果に加え、調査の過程で明確になった、日本の公共的放送番組アーカイブ(NHKアーカイブス)が収蔵する第二次世界大戦期資料についての分析を、平成30年度に発行した図書(『昭和期放送メディア論』)の一部に反映させた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3か年計画の初年度である平成30年度は、調査効率化に関する知見を得た上、海外アーカイブおよび海外放送局の実地調査とインタビューを実施し、事例分析の対象とするコンテンツの選定も滞りなく開始したことによって、本研究の目的は特段の支障なく達成できる見込みとなった。また、調査結果を、平成30年度に発行した図書の一部に反映させるなどの成果も得ていることから、おおむね順調に進展していると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、平成30年度の実績と成果を基に、アメリカにおける公共的放送番組アーカイブの調査を継続する一方、ヨーロッパにおける公共的放送番組アーカイブに関する調査について、その規模を拡大することによって調査分析をさらに進展させ、国際比較分析の基盤をより精緻に構築する。その上で、調査結果のとりまとめと総合分析の準備にも着手し、論文など成果発表に向けての作業も進める方針である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
編集能力を向上させたソフトウェアの実装に適応した新たな構成の機材が次年度以降にリリースされることがわかったため、予定していた設備の購入を次年度に繰り越したことによる。次年度使用額は、前年度購入予定だった設備の購入に充当する計画である。
|
備考 |
シンポジウム開催(ファシリテーター 辻 泰明)「メディアの転換期における調査研究の視座 ─テレビとインターネットの連携と融合へ向けて─」(平成31年3月27日・筑波大学):インターネットの興隆によるメディア利用の多様化に対して、調査研究の新たなあり方を探る目的のもと、日本放送協会放送文化研究所による最新の研究成果報告を交え、メディア研究の現状と今後の展望を考察した。
|