本研究は、英米の自治体における公文書館関係基金助成制度とその運用実態を明らかにし、日本国内に先例となる取り組みであるかを検討することを目的としている。主に国内外の地方公文書館における基金の有効活用事例、地域の歴史と文化、行政記録の保存のための特徴的活動等を中心にヒアリング調査を行った。 平成30年度は、国内の地方公文書館において導入実績のある国庫補助金等の制度概要と運用実態を調査した。国内では①岡山県立記録資料館(PFI手法導入事例)②大仙市アーカイブズ(国土交通省社会資本整備総合交付金導入事例)を調査した。この作業で日本にはまだ公文書館設立時に適切な外部資金制度を利用したものの、アーカイブズ機関の運営を持続的に支援するものがないことが分かった。 海外調査についてはアメリカのNHPRCGプログラムの制度概要と各種プログラムを把握した上で、①Illinois State Archivesと②New York State Archives、③Alabama Department of Archives and History及び④Georgia Archivesにおいて、NHPRCGとその他外部資金制度の運用実態、助成が公文書館に与える影響等を含めてヒアリングを実施した(平成31年3月)。 平成31年度は、主にイングランドのHLF-MLACの基金が州レベルの自治体における効用についてヒアリング調査を行った。①Suffolk Records Office(The Hold)、②Worcestershire Archives(The Hive)においては、収蔵庫を備えた複合施設の新設と地域の大学と連携したコミュニティ活動のための学習スペース新設事例の調査ができた(令和1年9月)。 各年度においてこれまでの調査成果として学会発表(1回)、研究ノートと論文(各1本)を発表した。
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