研究課題/領域番号 |
18K18335
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
佐藤 翔 同志社大学, 免許資格課程センター, 准教授 (90707168)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 書架 / 視線追尾 / VR / Instagram / 公共図書館 / サイン |
研究実績の概要 |
本研究課題は、ディスプレイとしての書架デザインに必要な要素を明らかにするとともに、既存の図書館空間のあり方を再検討することを目的に、図書館・書架環境における視線追尾等の実験を繰り返していくものである。平成30年度は以下の4つの実験・調査を遂行した。 (1) 京都府立図書館における書架探索・視線追尾実験:10名の被験者を対象に、指定した図書を探索する実験と、自由に館内を散策する実験の2種類を実施した。過年度の実験結果も踏まえたデータ分析の結果、特定図書の探索時でも閲覧される書架上の段には偏りがあること、高書架のみならず低書架でも注視位置には偏りが生じ、むしろ偏りが顕著となることが示されれた。 (2) 実験用書架を用いた図書の色・段と注視時間の関係実験:10名の被験者を対象に、図書の背の色・配架位置と注視時間の関係に関する実験を実施した。過年度の実験結果も踏まえたデータ分析の結果、色の誘目性よりも被験者の色の好みが注視時間に影響すること、書架上の位置も影響すること等が示唆された。 (3) Instagram上のハッシュタグ「#図書館」が付与された画像データの解析:「#図書館」を含む投稿画像10万件超を収集し、抽出したサンプルを対象に被写体として何が写っているかを調査した。利用者が注目する書架や図書館デザインの傾向が明らかとなることが期待される。現在までに、必ずしも被写体は図書館ではなく借りた資料を持ち出しての撮影が多いこと、図書館が写っている場合は著名な建築の、館内撮影写真が多いこと等がわかっている。 (4) VR技術による仮想図書館内でのサイン計画実験:VR上に図書館を構築することで、同一空間において、サインなどの要素を切り替えた場合の被験者行動の変化の分析を可能とした。これは今後、実空間実験で明らかになった傾向を検証する際に有益となる。端緒として書架サインの切り替え実験を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では初年度は2つの図書館で実験を行う予定であったが、実際には1館のみの実験となった。ただしこれは当初予定していたうちの1館について、既に前年度中に実験を実施してしまったことによる。そのため館内実験計画自体は当初予定どおりに進行している上に、懸念点であった判明した要素を実空間に反映することの困難性について、VR上で図書館を構築することにより容易に検証ができるようになったことは当初予定以上の進展であると評価できよう。
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今後の研究の推進方策 |
今後は引き続き、異なる館内要素(照明・通路幅等)を持つ図書館での実験を行うことを計画している。加えて、実空間実験で判明した要素を随時、VR空間でも実験できるよう、実装・検証していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を検討していた視線追尾装置新型の購入を見送ったことにより次年度使用が生じた。次年度以降、取得したデータの分析人件費と、被験者謝金として使用予定である。
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