研究課題/領域番号 |
18K18339
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
瀧本 彩加 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (40726832)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 社会的絆 / ウマ / 母子間コミュニケーション / 音声 / 嫉妬 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、同種個体間の社会的絆形成の適応的意義が明らかで、ヒトとも長く共に暮らしてきた伴侶動物でもあるウマを対象に、社会的絆形成を促す心理・生理要因を探ることである。本年度は、同種他個体間の社会的絆形成の基盤となる母子間コミュニケーションに関する研究と、ヒトとの社会的絆の質を把握するための嫉妬に関する研究を実施した。 第1に、昼夜集団放牧されているウマの母子を対象に、個体追跡法を用いて、音声コミュニケーションの発達と機能に関する観察研究を実施した。その結果、①子ウマが幼く、発声までの母子間最大距離が長くなるほど、頻繁に発声が生じ、②子ウマの成長に伴い、発声時の母子間距離や母子が分離してから発声するまでの時間が長くなることが明らかになった。また、ウマの母子の発声(特に母ウマの発声)は、再会後の授乳成功を促進することも示唆された。以上の結果から、音声が発達初期からウマ同士の社会的絆形成に役立つ可能性が示唆された。 第2に、日常的にヒトと関わりあう機会が多いウマを対象に、ヒトをめぐる嫉妬に関する実験研究を実施した。ウマにとって親密な人と見知らぬ人がそれぞれライバル個体(隣のウマ)またはライバル物体(ほうき)をかわいがる様子を呈示し、ウマの反応(関心の強さを示す注視・怒りを示す威嚇や攻撃)を測定した。ウマが特定の愛着のある人をめぐって嫉妬を示すならば、親密な人が隣のウマをかわいがる様子を呈示した条件(親密・ライバルウマ条件)でのみ、注視や威嚇・攻撃行動が頻繁に長く生じるはずだと予測した。全個体の平均データからは、予測を支持する結果は得られなかったものの、個体別に見ると、半数近くの個体では親密・ライバルウマ条件で最も頻繁で長い注視が生じ、その関心の強さを確認できた。今後は、実験状況を改善して再検討をするとともに、嫉妬の個体差に関する検討も合わせて進めていくべきと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター耕地圏ステーション静内研究牧場の協力を得て、ウマの同種個体間の社会的絆形成の基盤となる母子間コミュニケーションに関する観察研究を実施することができた。また、北海道大学馬術部の協力を得て、ヒトをめぐるウマの嫉妬に関する実験研究を実施することもできた。それらの研究成果の一部については、すでに学会発表も済ませており、研究を実施した学生とともに論文執筆に向けた準備を進めているところである。よって、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
ウマの社会的絆形成を促す心理・生理要因を探ることを目的とした研究は、来年度以降も、引き続き、上記の牧場や北海道大学馬術部などの研究協力施設の協力を得て、計画通りに研究を進めることができる見込みである。よって、来年度も、研究のスムーズな遂行が期待できると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に、個体の性格やホルモンがウマの社会的絆形成に及ぼす影響に関する研究まで進め、その成果を学会において発表する予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、当該研究実施を延期したため、未使用額が生じた。このため、上記の研究実施とその成果に関する論文執筆を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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