研究課題/領域番号 |
18K18340
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
井上 和哉 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (50631967)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 行為主体感 |
研究実績の概要 |
行為主体感とは,自分の行為が何らかの結果を生じさせた時に,その結果を生じさせたのが自分であると感じる感覚のことである。これまでの行為主体感の研究は主に単純な状況でのみ行われてきた。しかし,日常場面はそうではなく,人間やコンピューターのような自分以外の存在(他者)と相互作用しながら,成功や失敗を伴う課題を行うことが多い。本研究では,人間同士または人間と機械が協調もしくは敵対した状況下で,行為主体感がどのように生起するかを明らかにする。特に,課題の成功・失敗が行為主体感に与える影響が共同行為者との人間関係や共同行為者を機械であると認識するかによって影響を受けるかを検討する。 昨年度は,課題の成功・失敗が行為主体感に与える影響を測定するパラダイムを開発したため,本年度はこのパラダイムを利用し,他者との協力や敵対が行為主体感の生起に与える影響を検討することを目的とした。その結果,前年度の結果同様に課題の成功・失敗が行為主体感に強い影響を与えることが確認された。また,新型コロナウイルス感染症の流行により,十分な実験参加者を集めることができなかったため,統計的に有意な結果は得られていないものの,課題を協力して実施するか,敵対しながら実施するかによって,課題の成功・失敗が行為主体感に与える影響に異なる傾向が認められた。一方で,実験的な操作の目的が実験参加者に気づかれやすいことが明らかになったため,この点に関しては今後の改善が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新しい大学に異動したことにより,実験環境を一から構築することになり,実験の再開が想定よりも遅れた。 2020年2月後半から実験を再開できたが,新型コロナウイルス感染症の影響により,実験室実験の実施が不可能になり,十分な数の参加者を対象に実験が行えなかった。
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今後の研究の推進方策 |
実験の準備は完了しているため,新型コロナウイルス感染症の流行が収まり次第,実験を再開することができる。しかし,感染症の流行がいつ終わるかの目処が全く立たないため,オンライン実験等の対面での実験を必要としない環境でも実験を行うことを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により,実験を予定していた2月・3月に実験をわずかしか行うことができなかったため,人件費に残額が生じた。 この分は次年度に実験を行うことにより使用する予定であるが,感染症の流行の収束が遅れた場合,研究期間を延長して実験を行うこともあり得る。
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