研究課題/領域番号 |
18K18344
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
秋元 泰介 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 助教 (20801616)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 認知システム / ストーリー / 記憶 / 計算的創造性 |
研究実績の概要 |
2019年度は,前年度に引き続き,ストーリーを中心に据えた人工認知システム(総合的な心の計算システム)のための基礎的な理論の構築及びその実装作業を進めた.主な成果を以下に挙げる. (1) ジュネットの物語言説論に基づいて,認知システム(心のシステム)の内部におけるストーリーの構造とその動きを理論的に整理し,"Cognitive Systems Research"誌に発表した. (2) フォコニエとターナーによる概念融合(conceptual blending)の認知理論をもとに,ストーリーの創造性の一原理として,「ストーリー融合」の計算モデルの構築を進めた.その構想となる理論枠組みを国際会議ICCC 2019のポスターセッションで発表し,その後,初歩的な実装も行った(未発表).この問題には2020年度も継続的に取り組む予定である. (3) ストーリーを中心要素とする記憶システムの開発を進めた.心の中に,過去の経験,未来の展望,想像・虚構の世界,コミュニケーションを通して得られた記憶などを表すストーリーが蓄積されると仮定して,そのストーリー間を様々な種類の類似性・関連性に基づいて関連付ける(例えば想起する)仕組みの初歩的な実装を行い,国際会議ACS 2019のポスターセッション等で発表した.この問題には2020年度も継続的に取り組む予定である. (4) その他,ストーリー中の事象の意味を前後の文脈を加味して扱う計算モデルの構築(『認知科学』誌に発表)や,世界の表象(個体の心の内部に形成される世界)としてのストーリーのための統合的な表現枠組みに関する考察などを行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4年計画の半分が経過した.もともとの計画が探索的な性質の強いものであったが,2年間の研究を通して,開発するシステムの全体像や基礎的な理論が概ねできあがり,主要部分については既に実装段階に入っている.残りの期間で,本格的な開発作業に入ることができる状況になったため,おおむね順調と判断する.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に取り組む問題は大きく分けて次の4つである. (1) 世界の表象(個体の心の内部に形成される世界)としてのストーリーというコンセプトを具現化するための,統合的な内部表現の枠組みを,その生成的(意識的)な側面も含めて設計する. (2) ストーリーの創造性の一原理として,ストーリー融合の計算モデルの構築に取り組む. (3) 心の中で多数のストーリーを組織化する記憶システムの構築に取り組む. (4) 上記3つを含めて,認知システムの内部におけるストーリーの動き・生成を全体として整理する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は当初の年度予算(80万円)以上の支出があったが,前年度の未使用額約50万円残っていたため,予算に余裕が生じた.次年度の使用計画として,大部分を旅費に使用する予定であったが,新型コロナウイルスの影響により国内外の出張の激減が見込まれる.よって,次年度は研究備品の購入や論文の出版費などに予算を使用する予定である.
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