研究課題/領域番号 |
18K18345
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
星野 英一 慶應義塾大学, グローバルリサーチインスティテュート(三田), 特任助教 (00816796)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 視覚情景記憶 |
研究実績の概要 |
本研究は、情景を見たときに感じる馴染み感について、情景に含まれる物体同士の位置の関係性の観点から究明することを目指して計画した。情景とは複数の物体が配置された二次元情報と定義できるが、先行研究から、物体同士の位置関係の起こりやすさが、情景を分類する際に重要であることが分かっている。しかし、どのような位置関係がどの程度馴染み感に影響を与えるのかについては詳しく分かっていない。このような背景を踏まえて、本研究では、異なる視覚的パターンの違いを定量化する手法と視覚的パターンを探索的に生成するプログラムを組み合わせることで、従来難しいとされていた分類に関わる視覚的パターンが持つ情報量に対するヒトの感受性を明らかにすることを目的とした。本年度の研究は、昨年度に引き続き予定していた実験が行えず、研究発表もできなかったため、昨年度修正した研究計画からやや遅れた。しかし、取得済み実験データを対象に、昨年度来の解析を発展させ、意外な成果も得られた。昨年度は、情景の類似性に対して、確率モデルを用いた解析を行い、経験に伴い学習が進む様子を数量的に記述する試みを行ったが、それに加えて本年度は学習を加えた一般化線形モデルでの検証に着手し、その重要性を確認することができた。実験は、学習という変数が重要である可能性の追求を優先したため、実験準備が間に合わなかった。学会発表は、新型コロナウィルスの影響による社会情勢の変化のため、情報収集の形式に変化が生じた。次年度はこれまでの成果で未発表のものをまとめて発表を行う。また今後は視覚的パターンが持つ情報量に関する考察を様々な観点から行い、学会報告や学会での議論を踏まえて、体系的な説明を試みる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の達成度は、「やや遅れている」である。その理由として、機材は揃えたが、発展した実験が実施できなかったことが挙げられる。また、予定していた学会発表に参加できなかったため、研究推進のための情報収集や意見交換の機会が減少したことも大きな影響を与えた。しかしながら、一定の目処をつけることができた点もある。昨年度は、情景の類似性に対して、確率モデルを用いた解析を行い、経験に伴い学習が進む様子を数量的に記述する試みを行ったが、それに加えて本年度は学習を変数に加えた一般化線形モデルでの検証に着手し、その重要性を確認することができた。一方で、学習という変数が重要である可能性の追求を優先したため、実験準備が間に合わず、仮説検証に向けた取り組みが遅れたこともあった。また、当初予定になかった成果も得られた。データ駆動型のボトムアップの認知モデルの検証に取り組んでいたところ、予期せぬ発見があった。これは、今後の研究に大きな示唆を与えるものになりうる。さらに、新型コロナウィルスによる社会情勢の変化を受けて、当初計画を変更したことも達成度に影響を与えた。当初は学会発表を通して考察を深める予定であったが、学会の形式が変わり発表やフィードバックが変化し、研究の進捗に遅れが生じた。 以上のように、本年度は達成度にやや遅れがあったものの、検証や研究の進捗に一定の目処がつき、意外な成果も得られた。今後は、研究のための情報収集や意見交換の機会を増やし、計画を立て直して研究を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(R5年度)は、これまでに行った実験の結果をまとめ発表する。また当初予定していた実験に準じる発展させた実験を行う。この実験にはこれまでの多面的な解析結果の成果を反映し、学習の効果を含む実験変数を組み込む。具体的には、投影機を用いて情景の見え方の違いが情景認知にどのように関わるかを検討する。準備ができ次第、被験者の募集を行い、実験を行っていく。また、本年度までの成果をまとめ論文化を目指す。学会発表できる成果については積極的に発表を検討し、学会発表を通して議論を深める。情景の類似度判断が経験とともにどのように学習され、物体同士の位置の関係性からどのように影響を受けるのかについての解析行う。最終的には、ヒトが情景を分類する際にどのような情報を利用しているのかが定量化され、情景に対する馴染み感の要因が説明できるようになることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、先に行った実験を発展させた実験の実施の延期、及び学会参加と論文投稿を延期しているためである。次年度使用額のうち当初の予定で人件費として計上していた分は、予定通り参加者への謝金、及び論文校閲に使用する。また、旅費は参加に適当な学会があれば発表参加費に当てる予定である。残りの分は当初の予定通り、論文投稿費と必要な備品代として支出する予定である。
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