研究課題/領域番号 |
18K18349
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
福森 聡 関西学院大学, 理工学部, 契約助手 (00756710)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 再現可能性 / シチズンサイエンス |
研究実績の概要 |
ヒトの認知に関する知見が新たな技術を用いた実験により生み出されている一方で、新たな技術を用いた実験環境がどのように公開されれば再現可能性が高まるのかという議論はまだ少なく、方法論も確立していない.そのため、実験の再現可能性を高めるための情報公開の方法について検討することは必要不可欠である.このような再現可能性問題へ取り組むためには、研究者同士による議論が必要不可欠である.その理由は、本研究の提案する再現可能性問題の解決方法は研究自身のノウハウの公開と表裏一体だからであり、単純な研究に関する情報の公開だけでは研究者が不利益を被ると感じる可能性さえ考えられるからである. 本研究ではワークショップの開催や研究会の開催を通して若手研究者を中心に議論した.若手研究者は公開されたコンピュータプログラムを既に利用して実験していることや他の研究者の実験方法について知りたいという考えを持つことがわかった.一方で、自身の実験に関する詳細情報を公開することに対しては消極的姿勢があることも判明した.この消極的な姿勢については研究者等によって示唆されていたが、議論を通してこの示唆が的確であることが確認できた.さらに、シチズンサイエンスと呼ばれる市民参加型研究という比較的新しい研究形態が再現性可能性の向上に寄与する可能性が見えてきた.しかも、シチズンサイエンスは再現性可能性の向上と高い研究成果を両立できる可能性があるため、科学研究にとって非常に有益である.そこで本研究では、若手研究者を中心に開催したシチズンサイエンスのシンポジウムを通してシチズンサイエンスの可能性についても議論を深めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね計画通りに進んでおり、初年度に計画していた若手研究者を中心とした議論が進んでいる.計画時点では、初年度にヒューマンインタフェース学を中心とした工学の若手研究者を中心に議論することと、認知科学や心理学の研究者といったヒトを対象とする科学研究に取り組む研究者との議論する予定だった.そこで、本研究ではヒューマンインタフェース学会のシンポジウムでワークショップを開催して若手研究者や学生を中心に議論を行った.さらに、日本心理学会の若手の会主催の異分野協働懇話会2019を共同で開催し、心理学や認知科学の若手研究者らと再現可能性や実験の詳細な情報を公開することについて、若手研究者がどのように感じるのかについて議論できた.そのため、計画していた議論は概ね達成できたと考えられる.当初の計画にはなかったが、異分野の研究者との議論を通して、シチズンサイエンスという市民参加型の研究携帯が再現可能性を高めるための「仕組み」として機能する可能性が見えてきた.シチズンサイエンスは研究の目的達成に非常に有益であると考え、シチズンサイエンスに関する研究にも取り組み始めた.具体的には、日本学術会議内の2つの分科会が共同で主催するシチズンサイエンスのシンポジウムで話題提供の発表を行った.このシンポジウム登壇者らとシチズンサイエンスを利用した新たな研究展開について準備を勧めており、計画とは異なるが目的達成に向けて有益な研究が展開しつつある.
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今後の研究の推進方策 |
初年度に実施した議論内容をもとに、議論の内容を発展させてワークショップ等を開催して議論を継続する.今後は初年度のような若手研究者を中心とした議論だけではなく、より広い世代の研究者も交えて議論することで更に多角的に意見を募る予定である.初年度の研究を通して科学・社会科学分野の様々な研究者の協力を得られる可能性が見えてきた. 異分野の研究者の協力は、シチズンサイエンスを通して再現可能性を高めるために欠かせないものであり、これらの研究者と新しい研究を始めたい.議論と並行して、コンピュータプログラムを使って構成された実験環境の構築と構築過程の記録と分析に取り組む.
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次年度使用額が生じた理由 |
謝金や旅費等の支出を抑えることができたことで、差額が生じた. 差額分については、当初計画になかった研究であるシチズンサイエンスに関する取り組みに利用する予定である.具体的には,、旅費に利用する予定である.なぜならば、シチズンサイエンスに関する取り組みは計画になかったたため、議論すべきことが多くあるためである.なお、翌年度分については計画通りに利用する予定である.
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