研究課題/領域番号 |
18K18357
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
富井 直輝 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (00803602)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 膜電位動画再構成 / Bモード画像再構成 / 学習データセット構築 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,超音波計測や生体電気計測といった比較的簡便な生体計測において,生体不均一性を無視した仮定の下で行う従来の生体画像再構成手法に代わる,複数時系列信号のパターン認識に基づく新たな再構成アルゴリズムを構築する事である. 初年度である2018年度は,深層学習の学習データを生成するため,シミュレーションモデル上での計測データ収集を行った.胸部の超音波CT計測,および心臓組織の多電極カテーテル計測を模擬するため,それぞれ超音波シミュレーションモデルおよび電気生理シミュレーションモデルを構築し,モデル上に仮想的に配置したセンサにおける模擬時系列信号の生成を行った.さらに,超音波計測においては各点のエコー強度を,電気生理計測においては各点の膜電位を正解データとして,模擬計測データと対応付けた学習データセットを構築した. このようにして構築した学習データセットを用いて,深層ニューラルネットワークを訓練し,画像再構成アルゴリズムの構築を試みた.その結果,超音波CTの画像再構成においては,従来よりコントラストの高い画質で,超音波の散乱強度を表すBモード画像の再構成が可能であることが示された.また心臓組織の電気計測においては,従来のマッピングカテーテルに搭載されている20極よりも少ない5極程度の電極数で,旋回興奮波や平面波といった組織の興奮様態を示す膜電位変化の動画を,高い精度・空間解像度で再構成可能である事が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究計画は,深層学習のための多様性を含んだデータ・セットを,シミュレーションを用いて数千~一万通り構築することであった.超音波計測,心臓電気計測の両方の学習データセットで一万通り以上の学習データを生成する事は完了している一方,音響特性分布や電気伝導特性分布など,生体が持つ多様な不均一性を学習データに取り込む過程は今後も改善が必要である.一方で,翌年度以降の計画であった深層モデルの構築,および訓練の実施については,前倒して初年度に一定の成果が得られた.よって全体として,研究はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度以降は,学習データを生成するシミュレーションモデルを精緻化し,より汎用性の高い再構成モデルを学習することで,実計測データへの再構成モデルの適用可能性を実証する事を目標とする.超音波CTにおいては,生体内の音速不均一性を考慮する他,実際の計測で得られた胸部断層画像から作成した散乱強度分布を用いることで,生体不均一性のバリエーションを増加させ,シミュレーションの精緻化を行う.心臓電気計測においては,我々が有する膜電位光学マッピングを用いたウサギ心臓標本の興奮様態を基準として,同様の興奮様態となるようモデル特性の見直しを行うことで,シミュレーションモデルの精緻化を行う.このようにして作成したデータ・セットを用いてさらに学習を行い,実信号に適用して得られる再構成画像の精度を評価することで,実信号への応用可能性を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度GPUワークステーションを購入する計画であったが,初年度の検討においてはすでに保有する計算機で実行可能であったため,購入を延期し翌年度購入する計画へと変更したため.
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