研究課題/領域番号 |
18K18363
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
安在 絵美 奈良女子大学, 生活環境学部, 特任講師 (70814987)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 変形性膝関節症 / ワイヤレス歩行計測 / 膝不安定性 / 加速度 / 足底剪断力 |
研究実績の概要 |
膝OAの診断および重症度の判断は患者の主訴(疼痛程度)や医学的な画像検査により行われている.本研究では変形性膝関節症(膝OA)の歩行機能に着目し,地域で利用可能な歩行計測装置の開発と重症度推定のための評価指標の構築を目指している.これまで歩行時の足底圧力および足裏剪断力の変化や膝動揺(加速度)を計測するシステムを構築してきた.そして現段階では,歩行中の足底圧と画像診断結果との関連,および歩行時の足圧中心軌跡と疼痛程度との関連を明らかにしつつあり,重症度予測モデル構築のための被験者計測と分析を進めている. 2019年度は次の3点を中心に進めた.①計測システムの耐久性向上とセンサの拡張:前年度にプロトタイプ開発した足底圧・足底剪断力計測システムについて,耐久性向上と計測点拡張のための改良を行った.また,光信号を用いた同期信号入力回路を構築したことで,加速度センサなどの他のセンサとの同期計測が可能となった.②足部運動推定のための基礎的検証実験:足部の運動のうちとくに内外反運動は膝関節症の重症度と関連することが報告されているため,足底圧・足底剪断力ならびに加速度による足部運動を推定手法を検討している.当該年度は三次元動作解析装置による足部運動と足底圧・剪断力および加速度を計測し,基礎的な検討を行うための実験を進めた.足部に疾患がある対象者を含め計10名の実験が終了している.③膝動揺モデルの構築:先行研究調査により膝OAの重症度として,画像検査による医学的な重症度スケールや疼痛程度だけでなく,膝の動揺などの不安定性や膝の伸展状態についても重症度と関連があることが分かったため,包括的な重症度モデル構築のために新たな項目として追加し,分析を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度(2年度目)は初年度に開発したプロトタイプ計測システムの課題点について改良を重ね,耐久性やユーザビリティ性が向上した.そして,患者を含む対象者への基礎的実験からフィールドでの100名の高齢者を対象とした実験を行うことができ,順調に進められている.とくに分析およびモデル構築フェーズでは,膝関節症の症状の一つである膝の不安定性(膝動揺)に着目し,理学療法士の観察評価をベースとした評価モデルの構築を行った.具体的には,膝OAの対象者を含む78名の地域在住高齢者を対象に歩行中の膝下部および上部の加速度・角速度を計測し,理学療法士等の歩行の観察評価に基づいた膝の動揺レベル分類モデルを構築した.モデルの精度検証の結果,理学療法士と同等に膝の不安定性を評価可能であることが示された.以上より,開発,基礎検証,分析ならびに重症度モデル構築のすべてにおいて概ね順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
開発した装置を用いて足底圧力,剪断力,加速度データとモーションキャプチャシステムでの下肢運動の同時計測実験を行ってきた.今回の実験では日常的に過回内が発生する患者を含めた対象者をターゲットとした.最終年度は計測した足底圧力,剪断力,加速度データと足部の動的運動の関連性について検討する. 上記の基礎的実験と並行してフィールドでの高齢者歩行計測実験を行ってきた.対象とした高齢者はすべて膝痛を有しており,半年間の運動指導による介入を進めた結果,疼痛の改善が認められている.本研究ではこれまで横断的データをベースとして,歩行機能計測データと疼痛データならびに膝不安定性との関連性を明らかにし,膝の不安定性については予測モデル構築を進めてきた.これについて,本プロジェクトでは縦断実験を進めており,疼痛や不安定性の改善による歩行機能の変化を明らかにすることで横断的データによって明らかにされた関連因子やモデルの妥当性について検討したい.運動指導による介入プログラムの辞退者が多く,次年度の最終的な介入実験の参加者が少なくなることが見込まれるため,前半の対象者を中心に分析を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末実施予定の実験や学会等の参加が延期になったため
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