変形性膝関節症(膝OA)の診断および重症度の判断は患者の主訴(疼痛程度)や医学的な画像検査により行われている.本研究では変形性膝関節症(膝OA)の歩行機能に着目し,地域で利用可能な歩行計測装置の開発と重症度推定のための評価指標の構築を目指している.2022年度は昨年度成果発表した横断研究の結果に加え,介入による変化(縦断研究)としての分析を行った.分析対象者は介入前43名,うち31名が介入後も参加したため31名を対象とした.介入では,健康運動指導士による歩行指導を実施した.31名のうち、介入前に正座ができなかった対象者は18名であった.そのうち,17名で改善が見られ,半数の9名においては運動介入後に踵臀部間距離が0cmになり,正座ができるまで改善した.平均では,左右ともに30mm程度改善していた.膝痛に関する8項目についても,有意な改善が見られた.歩行計測について,踵臀部間距離が改善した対象者(N=17)における介入前後の足底圧を分析した結果,片脚支持時間は膝の機能改善に伴い,改善が見られたことから,経時的な変化への関連性も明らかとなった.開発したシステムは高齢者が集まる運動プログラムの中で適用でき,現場での実用可能性が確認でき,さらに本システムを用いて歩行指導の効果を評価できることが明らかになった.以上より,本研究の成果は潜在的な膝OAに対する早期対策に向けた評価手法の第一歩となり,地域の現場における定量的な歩行評価が可能なことが示唆された.
|