献血に依存しない血小板製造のソースとして、iPS細胞から分化誘導した血小板前駆細胞である巨核球をレンチウイルスベクターによる遺伝子導入によって細胞株化した。しかしこの自己複製型巨核球株(imMKCL)は、安定増殖株の樹立効率が低いことが課題となっている。これまでに、次世代シーケンス等を用いた解析より長期安定増殖imMKCL樹立における至適なc-MYC発現量の重要性を明らかにした。本研究では、c-MYC発現量と巨核球細胞株樹立及び長期自己複製の関係性を解明し、長期安定型自己複製を可能とするimMKCL細胞株をレンチウイルスベクターに依存せずに樹立する普遍的な細胞株製造方法を確立することを目的とする。昨年度は、ES細胞からの血液細胞分化においてサイレンシングを受けにくい発現ベクターを同定した。また、既存3因子であるc-MYC/BMI1/BclXlに加え sh p21、sh p53を発現させることで、既存3因子のみではimMKCLが樹立できなかったES細胞からimMKCLの樹立に成功した。本年度では、iPS細胞10クローンを上記の新規imMKCL樹立法で誘導したところ、全てのiPS細胞からimMKCLを樹立することに成功した。次に、新規に樹立したiPS由来imMKCL10クローンでのc-MYCの発現量を比較したところ全てのクローンにおいて同等のc-MYCの発現量を示し、imMKCL樹立においてのc-MYCの発現量の重要性を明らかにした。この研究成果は、課題であったimMKCLの樹立低効率を大幅に改善し、様々なHLA、HPA由来iPS細胞からimMKCLを効率よく作製できることが示唆され、現在の輸血医療が抱えるHLA/HPA一致血小板製剤供給源の問題点を解決する新たな可能性を提示した。
|