研究課題/領域番号 |
18K18366
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
橋本 洋章 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (50770674)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 嚥下 / 頭蓋内脳波 / 高周波脳律動 / High γ帯域 / 中心下領域 |
研究実績の概要 |
てんかん治療のため一時的に頭蓋内電極を留置した患者の中でも、中心溝の外側領域、つまり口腔・顔面領域にシート型電極を留置した患者4名の協力を得て、嚥下時の頭蓋内脳波を測定した。被験者には水嚥下、空嚥下を指示し、Sampling rate 10k Hzで頭蓋内脳波を記録した。嚥下時間は頸部に装着した喉頭マイク、電気声門図(頸部インピーダンス計測)を用いて特定し、嚥下開始0秒で脳波を揃え周波数解析を行った。解析対象とした被験者は、これまでの計測の結果、合計7名である。周波数解析の結果、嚥下開始1秒前から中心溝の外側領域、つまり中心下領域とよばれる部位でHigh γ活動(75-150 Hz)が出現することがわかった。また、嚥下開始3-2秒前に中心前回、中心後回でもHigh γ活動が出現しており、同活動を精査するため、開口時間、水注入時間を特定し、それぞれの時間で脳波を揃え追加の解析を行った。開口運動により中心前回の外側領域にHigh γ帯域活動が出現するとともに、β帯域の抑制が同時に観察された。ベータ帯域の抑制はその後消失し、リバウンド活動が観察された。水の注入時には中心後回で、著名なHigh γ活動が出現することがわかった。今回、High γ帯域の活動を用いることで、嚥下時には中心下回が、開口時には中心前回が、水の注入時には中心後回が活動することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、頭蓋内電極を留置したてんかん患者に対して嚥下の脳活動を記録することができた。最終目標である嚥下時脳活動の解読を実現するには、嚥下時の脳活動の特徴をまず明らかにし、それを用いて解読を行う必要がある。本年度は、計測した頭蓋内電極からの脳波を解析することで、嚥下に関連し最も活動する部位が中心下領域と呼ばれる中心溝の外側端とシルビウス裂に挟まれる狭い脳回であることが明らかとなった。今後は、中心下領域の脳活動を用いてヒトの嚥下意思解読の研究を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
嚥下に関連し、異なる時間に異なる部位が活動することがHigh γ活動を用いることで明らかとなった。今後は、このHigh γ活動がどのような特性を持っているのかをPhase-Amplitude Coupling (PAC)の手法を用いて解析していく。PACは運動や、感覚により高まることが知られているが、嚥下に関連したPACの報告はまだなく、嚥下時の脳活動の特性をさらに明らかにできるのではないかと期待される。また、嚥下時の脳活動の解読のためDeep learningの手法を用いていく。中心下領域が嚥下に特異的に活動する領域であることがわかったので、同部位の脳波を用いて解読を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品として計測データの記録用ハードディスクを予定していたが、脳波データの容量が予想量より下回ったことで、追加の記録用ハードディスクの購入が不要となったため。 次年度に繰り越す55,964円は、2019年度に予定している実験データの記録用ハードディスク購入費用として使用する。
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