研究課題
嚥下障害の新たな治療法として嚥下ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)を構想し本研究を行なった。最終年度であるR2年度では頭蓋内電極から計測される脳波を深層転移学習の手法を組み合わせることで、被験者の嚥下意図を約75%の精度で識別可能であることを実証し、論文発表することができた。頭蓋内電極を留置したてんかん患者を対象にして嚥下時の脳活動を確実に計測する手法を研究期間の初期に確立させることができた。被験者の頸部に装着した電気声門図を用いて嚥下をモニタリングしながら、頭蓋内脳波を同時計測し嚥下時間に対応してトリガーを頭蓋内脳波に入力することで、嚥下に関連した脳活動を解析した。その結果、嚥下によりシルビウス裂に沿った脳皮質が活動することが分かり、特に前頭弁蓋部や中心下領域に脳活動が出現することが分かった。また脳活動の中でもHigh γ 帯域 (>75Hz)の活動が他の低周波帯域の活動に比べより時空間的に限局し出現することが分かった。嚥下はまず随意嚥下からはじまり、不随意嚥下に移行することで完了する。今回の研究で随意嚥下時にHigh γ 活動が出現し、不随意嚥下時にはそのHigh γ 活動が消失することが分かった。これは随意嚥下時には大脳皮質が嚥下の実行により関わっており、不随意嚥下時には大脳皮質ではなく脳幹などの深部脳構造が嚥下実行により関連しているのではないか、と考えさせる所見であった。最後に嚥下に関連したHigh γ 活動を深層転移学習と組みわせることで、嚥下・開口・水の口腔内への注入・安静の4段階を約75%の精度で識別できることを実証することができた。本研究で得られた結果は嚥下BMIや、嚥下障害に対するニューロモデュレーション領域に対して重要な知見を付与するものであると考える。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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