研究課題/領域番号 |
18K18374
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
田中 信行 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (00724692)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 濡れ性評価 / 濡れ性局在 / フィブロネクチン / 蛍光色素 / 糖タンパク質 |
研究実績の概要 |
本研究では、培養細胞表面の非接触濡れ性センシングにより、濡れ性局在を介した細胞機能の品質評価を目的としている。細胞機能を司る生体関連物質や生体分子は、水の存在を前提としてその機能を発揮する。このことから「水の振る舞いに情報が宿る」という本研究の究極的な問いをベースに、液体と物質とのなじみやすさを示す濡れ性が情報取得のプローブとなると考えた。具体的には、親水性の生体分子である糖タンパク質の局在を可視化するとともに、独自に開発した非接触濡れ性センシング技術により濡れ性の局在をそれぞれ調べ、両者の関係性を調査する。 当該年度は、特に細胞の接着を担う糖タンパク質の1種であるフィブロネクチンの局在を可視化することを目的として研究を行った。ここでは蛍光色素を取り付けたフィブロネクチンの蛍光顕微鏡観察を介してその局在を調査する。このため、タンパク質に蛍光色素を取り付ける精度が重要となる。通常、蛍光色素はリシン残基に取り付けることが多いが、反応の過程で、数多く存在するリシン残基にどれぐらい蛍光色素が取り付けられたか分からない場合が多い。そこで本研究ではシステイン残基をターゲットとして蛍光色素を取り付けることにした。その結果、フィブロネクチン1分子に対して蛍光色素を平均的に1個以内のばらつきで取り付けられることが分かった。これによってフィブロネクチン局在を精度よく調査できるようになると考えられる。また、リシン残基は細胞接着と関連している場合もあることから、システイン残基を用いることで細胞接着機能への影響が少ない実験系を構築する上でも重要な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フィブロネクチンの局在を可視化する上で欠かせない蛍光フィブロネクチンを精度よく合成することができているため。
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今後の研究の推進方策 |
すでに非接触濡れ性センシング技術を用いて、ミリメートルオーダーの濡れ性の局在を可視化することは成功しており、より小さなスケールで可視化が可能かどうか調査する。また、フィブロネクチンのマイクロパターンを利用することでフィブロネクチン自体の濡れ性を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験手法の変更や既存装置の活用などによって効率的に執行できたため次年度使用額が生じた。次年度使用額と翌年度助成金分は、これまでに得られた知見を多面的に理解するために、実験条件を増やす必要があることから、この分の実験試薬や物品およびデータ解析費用に充てるとともに、当初計画のとおり細胞系での実験のために使用することを計画している。
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