研究課題/領域番号 |
18K18374
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
田中 信行 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級研究員 (00724692)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 濡れ性評価 / ポリマー / 空気噴流 / 湿潤状態 / 乾燥状態 / 培養細胞 / 水和 |
研究実績の概要 |
本研究では、培養細胞表面の非接触濡れ性センシングにより、濡れ性局在を介した細胞機能の品質評価を目的としている。細胞機能を司る生体関連物質や生体分子は、水の存在を前提としてその機能を発揮する。このことから「水の振る舞いに情報が宿る」という本研究の究極的な問いをベースに、液体と物質とのなじみやすさを示す濡れ性が情報取得のプローブとなると考えた。 当該年度は、乾燥状態と湿潤状態の濡れ性をそれぞれ評価した。従来、研究代表者の独自の技術であった空気噴流印加液体排除(Air-injection mediated liquid exclusion; AILE)法に加えて、事前に空気噴流を噴射しながら液体をサンプル上に注ぎ、この際の液体挙動から濡れ性を評価するプリジェットAILE法を実施した。従来法による湿潤状態における評価に加えて、プリジェットAILE法では、乾燥状態の濡れ性評価が可能となる。このため乾燥状態と湿潤状態の表面の濡れ性を、同一のシステムで評価し、比較することが可能となった。このことは、乾燥状態と湿潤状態で界面特性が変化するようなサンプルに対して、その両方の状態における性質を比較可能な形で正しく理解できるという観点から意義深い。 ターゲットは医療機器用ポリマーコーティング材料であり、血栓の形成やタンパク質付着の防止を目的として使用されるものである。今回使用したMPCポリマーコーティング材料は、細胞膜と類似した親水性のリン脂質と疎水性のアルキル鎖から構成される。このような親水性、疎水性両方の性質を有する材料では、乾燥状態では疎水性官能基が、湿潤状態では親水性官能基が表出することが知られている。実験の結果、プリジェットAILE法では濡れ性の指標となる空気噴流印加時の液体排除直径が、通常よりも1.5倍程度大きくなることがわかり、乾燥による界面の性質の変化を捉えたものと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ポリマー材料の水和状態の変化を評価するという新しい用途の開拓に成功したため。
|
今後の研究の推進方策 |
乾燥状態と湿潤状態の界面状態の違いについて、調査をすすめる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大防止対策や世界的なライフサイエンス器材の需要の高まりのため、培養細胞を用いた実験に遅れが生じたため。次年度使用額は当該実験の実施に使用する予定である。
|