これまで開発してきた生体組織の分散特性を考慮できる電磁界解析手法は、生体内に生じる電磁エネルギーの時間的な変化を求めることができるが、生体組織に吸収されて熱に変換される成分のみを抽出することが不可能であった。その問題を解決するために、数値逆ラプラス変換及びProny法を用いた複数項のデバイ分散パラメータを抽出できるアルゴリズムを新たに考案した。また、新たに周波数分散型時間領域有限差分(FDTD)法の定式化を行い、解析結果をMieの解析解と比較し、開発した数値手法の妥当性検討を行った。広帯域パルス電磁界のばく露による日本人男性および女性の人体頭部に時々刻々吸収されるエネルギー量の時間的変化を求め、招待論文に研究成果をまとめた。本解析手法を用いることで、体内に埋め込んだパルス性電磁波源の安全性を調査することができる。 一方、3-20GHz帯までのパルス発生器から出力されたパルス信号を広帯域デジタルオシロスコープ(帯域 40GHz)によって波形観測を行い、波形データを取得した。得られた波形データを数値シミュレーション内で、人体に医療デバイスを埋め込むことを想定し、生体等価ファントム内に埋め込んだ広帯域アンテナから広帯域パルス電磁界を発生させ、ファントム外部に置かれた様々な観測点における受信パルスの波形を求めた。これらのパルス波形のデータを用いて、実際に生体ファントム内の電磁界発生源の位置を良い精度で特定することができることを確認した。
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