研究課題
重篤な筋疾患を羅漢した患者は、一般に、自発的な運動や心肺運動が妨げられるため、致死的な病態を呈することが多く、有効な治療法の確立が強く望まれている。近年、遺伝子の異常に起因する難治性筋疾患である筋萎縮性側索硬化症(SMA)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー症や強直性ジストロフィー症に対する治療法として、核酸医薬(siRNAおよびアンチセンス核酸)の開発が進められており、一部の核酸医薬は治療薬として上市されている。一方、核酸医薬は筋組織への到達率が極めて低く、全身に分布した内の僅かしか筋組織に蓄積せず、限定的な治療効果しか得られていないのが現状の課題としてあげられている。本課題では、上述の課題を克服するため、核酸医薬を中心とする筋疾患に対する治療薬を筋組織(骨格筋および心筋・横隔膜)へと効果的に送達するための筋組織を標的とした薬物送達システムの開発を目指した。具体的には、薬物送達システムの骨格の分子サイズを精密に制御し、腎排泄や肝集積を抑制することで筋組織への送達効果の増大を試みた。昨年度に引き続きサイズ制御および筋疾患(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)モデルマウスを用いた核酸医薬送達システムの集積性の検討を行った。その結果、筋疾患モデルマウスを用いた場合、正常マウスと比べて10~20 nm の分子サイズ域において筋組織への集積量の増大が認められた。また、核酸医薬単独投与の場合と比べ、96時間後に6倍以上の筋組織集積量の増大が認められた。さらに、核酸医薬の単独投与と比べ、サイズ制御型の核酸医薬送達システムでは筋組織内の標的遺伝子発現ノックダウン効率が確認された。以上のことから本課題で開発した医薬品送達システムは、筋組織への薬物送達システムとして極めて有用であることが示された。
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