研究課題/領域番号 |
18K18382
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
赤木 友紀 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (40782751)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バイオマテリアル / 光機能性 / 薬剤溶出バルーン / 局所的薬剤送達システム |
研究実績の概要 |
効率的な薬剤送達を可能にする薬剤溶出バルーン(DEB)を実現するためには、患部まで安定に薬剤を保持し狙ったタイミングで確実にリリースさせることが不可欠である。そこで、当該年はバルーン表面に薬剤を担持させ、光刺激によって薬剤をリリース可能な光応答性薬剤担持型バルーンのコンセプトを証明することを目的とした。まず、医療用バルーンと同素材であるラッテクス粒子に対して光開裂基(PC)を導入した後、モデル薬剤として蛍光分子であるCy5を結合させたCy5-PC-Latexを作成した。Cy5-PC-Latexに対して共焦点顕微鏡(LSM)を用い、Latex表面にCy5が導入されていることを確認した。さらに、光開裂を誘発させる波長の光を一定時間照射した後、再びLSMを用いた評価を行なったところ、光照射箇所のみのCy5の蛍光が消失した。この結果から、目的とする箇所、狙ったタイミングでの薬剤リリースを可能する本コンセプトの有効性が証明された。さらに、in vitro実験から光開裂によってリリースしたCy5が細胞に取り込まれることを確認した。また、本システムの安定性を検討するために、従来のDEBに対しても適用されているshake testを行なった。コントロールとして、既存のDEBと同様の方法でラテックス粒子にCy5を搭載したCy5-int-Latexを作成し、Cy5-PC-Latexとの比較を行った。その結果、Cy5-int-Latexについては実験直後からCy5が剥離したのに対し、Cy5-PC-Latexに関してはCy5の減少は見られずLatexに残存することが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題のコンセプトを証明するために重要な光応答性薬剤担持型ラテックス粒子の作成、光機能性評価、in vitro実験を予定通りに実施した。その結果、光開裂基を介して蛍光物質を粒子に搭載させること、また光照射によって短時間でリリースさせることに成功し、in vitro実験によりリリースした蛍光物質の細胞への取り込み挙動を確認した。さらに、担持した蛍光物質の安定性評価により血流中でも高い安定性を保持できる可能性を示すことができたことから、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度において、光照射によってのみ薬剤をリリース可能なシステムの作成に成功した。しかしながら、ラテックス表面は疎水性が高いために血液適合性の低さが想定される。 そこで2019年度は、血液適合性の向上を目的として高分子の導入を行う。Cy5-PC-Latexと同様にLSMを用いた評価により高分子の導入を確認した後、マウスの血液と接触させ血液適合性を評価するとともに、in vivoでの評価を検討している。また、担持可能な蛍光物質の量と高分子の量はトレードオフの関係にあるため最適化を行う。さらに、血液中におけるCy5-PC-Latexの光応答性を確認し、開裂速度や挙動に課題が生じた際には、PCリンカーの構造を適宜変えることで改善を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は、マウスから採取した血液を用いた評価やin vivoでの評価を多く行うため、費用が多く必要となる。また、血液適合性を付与するために導入する生体適合性高分子であるポリエチレングリコール(PEG)は高価な試薬であるが、最適化のために異なる分子量種を揃える必要があり、さらに、粒子への導入を確認するために蛍光分子を有したPEGを購入する必要があり費用がかかる。以上の理由から、研究を遂行するために次年度に予算を多く残した。
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