研究課題/領域番号 |
18K18383
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
野本 貴大 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (00734732)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高分子コンジュゲート / ボロノフェニルアラニン / 中性子捕捉療法 |
研究実績の概要 |
本年度では、ボロノフェニルアラニンのボロン酸と結合することのできるポリオール構造を有する、様々な物性を持つ高分子を合成し、その高分子とボロノフェニルアラニンから構成されるポリマーコンジュゲートによる腫瘍へのホウ素デリバリーについて研究を行った。特に、高分子コンジュゲートの電荷に着目して研究を進めた。その結果、中性の高分子コンジュゲートについては非常に効率よく腫瘍にホウ素を送達し、血中や正常組織からも速やかに排出された。ポリアニオン系のポリマーコンジュゲートは、腫瘍にホウ素を送達しつつも、分子量が高い場合、血中に滞留しやすいために、最終的な腫瘍と血液中のホウ素濃度比が低下する傾向が見られた。一方、適切に分子量を調節したポリカチオン系の高分子コンジュゲートについては速やかに腎排泄を受けるため、腫瘍へ迅速に集積しながらも血液中からは即座に消失し、高い腫瘍/血液ホウ素濃度比が得られた。以上の結果から、高分子コンジュゲートの電荷がホウ素の体内動態をコントロールするのに重要なパラメータであることが示唆された。また、中性高分子コンジュゲート、カチオン系高分子コンジュゲートについて、皮下腫瘍モデルにおける腫瘍集積・腫瘍滞留性は従来のホウ素薬物よりも飛躍的に優れており、本研究の目指す代謝制御のコンセプトをサポートする結果であった。さらに、中性子捕捉療法の治療効果を検討した結果においても、従来のホウ素薬物よりも極めて優れた効果を示すことが分かった。これらの高分子コンジュゲートは臨床的にも有用であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、高分子の合成を行い、高分子の物性がどのようにホウ素の体内動態に影響するかを明らかにすることに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
高分子コンジュゲートの電荷の影響を検討することが出来たので、今後は、ボロン酸とポリオールの結合力がいかに細胞との相互作用や体内動態に影響するかを詳細に検討する。特に、アミノ酸トランスポーターとの相互作用について明らかにしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた高分子の合成ルートよりも、安価かつ容易に目的物質を合成する新たな方法を見出し、合成実験にかかるコストが大幅に削減された。また、細胞実験と動物実験を迅速に行えるよう各ステップを改善した結果、目的を達成するのに必要な実験のランニングコストを節約することができた。これらの理由により未使用額が生じた。 今年度の研究により、細胞実験・動物実験の効率化が行えたため、翌年度は本資金を活用して生体活性評価の規模を拡大したいと考えている。
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