我々はこれまでに細胞核でエピソーマルに持続感染する特徴を持つボルナウイルス(BoDV)を利用したウイルスベクター、ボルナウイルスベクター(BoDVベクター)を開発した。BoDVは細胞周期を通じて複製複合体であるリボ核酸複合体(RNP)を宿主染色体に結合させながら複製するため核内で持続感染する。しかし、増殖の過程でDNAを生産せず、複製のために宿主染色体に入り込む必要がないため、宿主ゲノムに組み込まれる可能性は極めて低い。また、ウイルスの多くは増殖の過程で宿主細胞を殺してしまうが、BoDVは細胞障害性を示さずに持続感染するため、インテグレーションフリー長期遺伝子導入ツールとしての有用性が高い。iPS細胞への安定的かつ効率的な遺伝子導入法の確立は、再生医療や創薬の開発において重要な課題である。ボルナウイルスベクターは宿主ゲノムへ組み込まれることなくiPS細胞へ効率よく安定的に遺伝子導入が可能であるが、他のベクターと比べ作製効率が悪いという問題点がある。平成30年度はボルナウイルスベクターの作製効率を改善するため、①ベクター産生細胞の検討、②ベクタープラズミド導入法の改良を目的とした。
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