研究課題/領域番号 |
18K18386
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
曽宮 正晴 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (50788974)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | エクソソーム / mRNA / ベクター |
研究実績の概要 |
これまでに、細胞から分泌されるエクソソーム内にmRNAを内封する技術の検討を行ってきたが、当初予定していた、RNAアプタマーと標的タンパク質の相互作用を利用する方法はうまく機能しないことが判明した。これは、RNAアプタマーが細胞内で適切な二次構造を取っていないことなどが原因として考えられる。他にも、RNA-タンパク質間の組み合わせを数種類検討したが、細胞内でRNA-タンパク質の結合が確認できたものでも、エクソソーム内にRNAを適切に内封させ、分泌させることはできなかった。原因として、細胞内でのmRNAの局在が、標的タンパク質との結合だけでは制御できないためであると考えている。 そこで方法を変え、ウイルス由来のRNA結合タンパク質および数種類の関連タンパク質を293細胞において発現させることで、タンパク質結合配列をもつRNAを細胞外へ小胞内にパッケージングした状態で分泌させることに成功した。また、レポーター遺伝子であるルシフェラーゼのmRNAを含む分泌膜小胞を別の培養細胞に添加すると、レポーター遺伝子が発現していることを確認した。つまり、mRNAを送達するベクターとして利用可能であることが示された。いくつかの検討から、mRNAの細胞外への分泌および他の細胞への取り込みと遺伝子発現は、再現性良く得られ、数種類の異なる細胞でも同様の結果が得られた。つまり、細胞外小胞を用いたRNA送達ベクターとしての機能が実証できたと判断している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初構想していた、RNAアプタマーを使用する方法がうまく機能していないことが判明したため、新たにRNA結合タンパク質およびその結合RNA配列を探索した結果、ウイルス由来のタンパク質とRNA配列を用いることで、細胞から分泌される小胞内にRNAを内封することができた。当初想定していた方法とは異なるものの、細胞内で発現しているRNAを細胞外へ分泌させるという目的は達成することができた。さらに、分泌された小胞は他の細胞に取り込まれ、内封しているmRNAを発現させることが可能であることが示されており、機能面での実証もできている。
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今後の研究の推進方策 |
RNAを含む細胞外小胞に含まれているタンパク質を改変し、さらに効率よく細胞内へmRNAを送達できるように改良する。また、RNAが細胞外小胞へ取り込まれるメカニズムを詳細に解析することで、RNAのさらなる効率的な内封方法を検討する。また、細胞レベルでのRNA送達が実証できたので、マウスなどの小動物を使用して、in vivoでもRNAが送達可能であるかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた学会への出張が大幅に減ったとともに、消耗品の購入も想定していたほど必要なかったため、残金が生じた。初年度の残金は、翌年度の研究の執行(主に消耗品購入)に充てることとする。
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