研究実績の概要 |
本研究では,①抗原やアジュバントを徐放させることで高効率な免疫応答を実現する。②免疫細胞を抗原やアジュバントと共に投与部位局所に留めておくことで強力ながん免疫応答を誘導する。以上2つの目的を達成するための温度応答型生分解性インジェクタブルポリマー(注射可能ポリマー:IP)の開発を行なった。 本年度は,免疫系を構成する細胞のなかでも強力な抗原提示能を有するマウス骨髄由来樹状細胞(BMDCs)をIPに混合してマウスに投与し,投与部位でのDCsの保持性,マウスの免疫応答,担がんマウスに投与した場合の腫瘍の縮退効果について検討した。蛍光ラベルしたBMDCをIPに混合してマウス背部皮下に投与したところ,IPを用いることで細胞由来の蛍光が投与部位から検出される期間が延長された。これはIPを用いることで投与部位での細胞保持性が向上したものと考えられる。卵白由来オボアルブミン(OVA)とアジュバント活性を持つオリゴ核酸,CpG-DNAをIPに混合し,さらにBMDCを混合してマウスに皮下投与し,定期的にマウスから採血した。血中のOVA特異的なIgG1抗体価を調べたところ,IPを用いて投与した群で高い抗体価を示すことが分かった。担がんマウスに投与した場合でも,BMDCとOVA, CpG-DNAをIPに混合して投与した場合は,IPを用いないグループやDCを混合しない投与群よりも効率的に腫瘍の成長を抑制した。IPを用いることでBMDCの投与部位での保持性があがり,マウス体内のリンパ節等に移動し,抗原提示を行なうことでマウスの免疫系を活性化したと考えられる。
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