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2019 年度 実施状況報告書

生分解性ブロック共重合体を用いたミセル型高分子核酸キャリアの構築と機能評価

研究課題

研究課題/領域番号 18K18391
研究機関公益財団法人川崎市産業振興財団(ナノ医療イノベーションセンター)

研究代表者

林 光太朗  公益財団法人川崎市産業振興財団(ナノ医療イノベーションセンター), ナノ医療イノベーションセンター, 研究員 (00780660)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード核酸デリバリー / バイオマテリアル / 核酸医薬
研究実績の概要

生分解性ポリマーをベースとしたASO内包ミセルの調製のため、親水性の保護層であるポリエチレングリコール(PEG)セグメント、温度応答性セグメントとして生分解性のあるポリアミノ酸由来のポリマー、ポリカチオン性ポリアミノ酸を有する三元系ブロック共重合体の合成を検討した。昨年度は、温度応答性セグメントの性能を分析した。温度応答性部のみからなるポリマーを合成し、その相転移温度について詳細に検討し、その機能には40以上の重合度が必要なことやその温度応答能にジアルキルアミノ基のプロトン化が関与していることを解明した。
本年度は、特許申請時に求められた補足データとしてジアルキルアミノ基のアルキル基の及ぼす影響を調査した。温度応答性部のみからなるポリマーを合成し、一般に試薬会社より販売されている、炭素数の異なるジアルキルアミノ基、すなわち、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基を有する一級アミンの四種類に関して、温度応答能を示すかを検討した。四種類のアミンは全て、定量的にポリアミノ酸の側鎖に導入することに成功した。温度を変化させて、その凝集体の様子を動的光散乱を用いて観察したところ、生理的条件下では、昨年より検討していたジブチルアミノ基を有するポリマーのみが温度応答能を示した。その転移温度は31度であり、ポリイソプロピルアクリルアミドの下限臨界溶液温度と近く、生体材料としての利用が期待できる。この内容を加えて、国際特許出願を行なった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

現状は、温度応答性セグメントの変化挙動を確認でき、転移温度は31度と、ポリイソプロピルアクリルアミドの下限臨界溶液温度と同等であった。このことから、生体内に適用した際に期待の性質変化が得られる可能性を示せた。重合度の検討により三元系ブロックの鎖長は、温度応答性ブロックの重合度が40以上必要であることが示され、その三元系ブロック共重合体の合成検討を進めている。おそらく前例の三元系ブロック共重合体よりも重合度が大きいことにより、反応溶媒への中間体の溶解度が減少しており、三つ目のブロックの合成が難航している。現在は、反応溶媒の検討を行っている。

今後の研究の推進方策

本年度は、引き続き三元系ブロック共重合体の合成の検討を行う予定である。いままでの結果に基づき、温度応答性ブロックを伸長後、カチオンブロックを伸長して合成する。合成した各種高分子とASOとを氷冷下にて水溶液中で混合し、高分子ミセルの調製を行う。調製した高分子ミセル溶液をヒトやマウスの体温に近い37 ℃に昇温することで、温度応答性セグメントを疎水化し、中間保護層を形成する。以降の評価は37 ℃にて行う。電気泳動や光散乱法、電子顕微鏡を用いて、ミセルの構造解析を行う。
機能評価として、生体内でPIC型高分子ミセルの障害となる血清タンパクやポリアニオンが誘起する解離を、異なる濃度の血清やヘパラン硫酸と混合し、蛍光相関分光法や電気泳動を用いて評価する。続いて、蛍光標識核酸を用いてミセルを作成、動物に投与し、その蛍光強度の継時変化を観察することで、生体内安定性の評価を行う。側鎖に導入するジアルキルアミンのアルキル鎖の少なした温度応答性を有さないポリマーと比較することにより、生分解性の温度応答性三元系ポリマーによるミセル安定化の実証を行う。

次年度使用額が生じた理由

核酸の購入など準備を進めてきたが、ポリマー合成の予定外の困難が起こり、評価実験の開始が遅れたため、それに伴う予算が執行されなかった。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)

  • [雑誌論文] In vivo rendezvous of small nucleic acid drugs with charge-matched block catiomers to target cancer2019

    • 著者名/発表者名
      S. Watanabe, K. Hayashi, K. Toh, H. J. Kim, X. Liu, H. Chaya, S. Fukushima, K. Katsushima, Y. Kondo, S. Uchida, S. Ogura, T. Nomoto, H. Takemoto, H. Cabral, H. Kinoh, H. Tanaka, M. R. Kano, Y. Matsumoto, H. Fukuhara, S. Uchida, M. Nangaku, K. Osada, N. Nishiyama, K. Miyata, K. Kataoka
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 10 ページ: 1894

    • DOI

      10.1038/s41467-019-09856-w

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Dually stabilized triblock copolymer micelles with hydrophilic shell and hydrophobic interlayer for systemic antisense oligonucleotide delivery to solid tumor2019

    • 著者名/発表者名
      Beob Soo Kim, Hyun Jin Kim, Shigeto Osawa, Kotaro Hayashi, Kazuko Toh, Mitsuru Naito, Hyun Su Min, Yu Yi, Ick Chan Kwon, Kazunori Kataoka, Kanjiro Miyata
    • 雑誌名

      ACS Biomaterials Science & Engineering

      巻: 5 ページ: 5770-5780

    • DOI

      10.1021/acsbiomaterials.9b00384

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] ポリアミノ酸骨格を有する温度応答性ポリマーの合成と機能評価2019

    • 著者名/発表者名
      林光太朗、片岡一則
    • 学会等名
      第68回高分子学会年次大会
  • [学会発表] カチオン性ブロック共重合体の重合度がsiRNA会合体の構造に与える効果2019

    • 著者名/発表者名
      林光太朗、福島重人、長田健介、西山伸宏、宮田完二郎、片岡一則
    • 学会等名
      第29回バイオ高分子シンポジウム
  • [学会発表] siRNA 送達に向けたカチオン性ポリアミノ酸の検討2019

    • 著者名/発表者名
      林光太朗、福島重人、西山伸宏、宮田完二郎、片岡一則
    • 学会等名
      第68回高分子学会討論会
  • [産業財産権] 刺激応答性ポリマー2019

    • 発明者名
      林光太郎、片岡一則
    • 権利者名
      川崎市産業振興財団
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      PCT/JP2019/009037
    • 外国

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公開日: 2021-01-27  

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