研究課題/領域番号 |
18K18396
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鶴岡 典子 東北大学, 工学研究科, 助教 (70757632)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 微小還流 / 微小流路 / 酵素電極 / インスリン抵抗性 / 糖負荷試験 |
研究実績の概要 |
局所糖負荷試験に用いる針として、グルコース注入用流路と計測用流路とを鍼灸針表面に作製し、作製した針を用いてブタ摘出皮膚における注入・計測実験を行った。 針の作製は、将来的に量産化を視野に入れV溝を作製したガラス板に鍼灸針を並べて固定した状態で5本同時に作製を行うプロセスを確立した。また、流路材料には生体適合性のあるポリイミド材料を用いた。 作製した針の注入用流路を用いて流量と注入圧の関係を確認した。針をブタ摘出皮膚に刺入し、シリンジポンプから純水を注入した。注入量を一定とし、流量を変化させた場合の最大注入圧、および流量を一定とし、注入量を変化させた場合の最大注入圧を計測した。注入量が一定の場合、流量に対して注入圧はほとんど変わらず、流量が一定の場合は注入量に応じて注入圧は増加したことから、注入圧はほぼ注入量のみに依存して増加することを確認した。 注入および回収機能の評価として、針先をブタ摘出皮膚に刺入した状態で、グルコース注入前後の皮膚中グルコース濃度を微小還流により計測した。10 分間ずつ還流液を回収し、蛍光染色により溶液中グルコース濃度を計測した。還流を始めて10 分後に、注入用流路からグルコース溶液を注入した。注入を始めた10~20 分で徐々にグルコース濃度が増加し、注入が終わった後の20~30 分および30~40 分では、グルコース濃度はほぼ一定となった。グルコース濃度を一定として注入量を変化させた場合も、注入量を一定としてグルコース濃度を変化させた場合も注入したグルコース量に応じてグルコース濃度が変化することが確認でき、マウス皮膚での実験の際の注入量の目安を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では、本年度までに局所糖負荷試験装置の作製を行い、装置が完成次第健常マウスを用いた局所糖負荷条件の検討を行う予定であった。しかし、マウスでの糖負荷試験を行う前に注入量の検討を行う必要があったため、ブタ摘出皮膚を用いた注入・計測実験を追加した。これにより、作製した針の性能試験、及び目安の注入量を検討することができた。また、回収されるグルコース濃度が分からないため、還流液中のグルコース濃度を計測するためのセンサについても作成出来ていないが、ブタ皮膚での実験により回収されるグルコース濃度の範囲が確認できたため、センサの作製に取り掛かることが可能となった。 糖尿病の専門医との打ち合わせにより、注入したグルコースがそのまま回収される可能性もあることから、グルコースだけでなくインスリン負荷を行いグルコース濃度の変化を計測することも有用である可能性があることが分かった。また、局所負荷試験の有効性を確認するには、針上の2本の流路だけでなく離れた位置に設置した針でも物質回収を行い、周りの組織への影響や注入薬液の計測への影響も確認する必要があるとのアドバイスを得たため、これらを今後のマウスを用いた実験で実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、(1)健常マウスを用いた局所糖負荷条件の検討による条件確立後、(2)糖尿病モデルマウスを用いた有用性評価を行う。それと同時に、(3)グルコース濃度計測用センサの作製も行い、グルコース連続測定可能なシステムを確立する。 (1)健常マウスを用いた局所糖負荷条件の検討では、皮内注射の注入量を目安に100 µL以下の液量でグルコース濃度を変化させながら局所糖負荷試験を行い、糖負荷後、糖が代謝されグルコース濃度が減少する様子を観察できるか、同時に血糖値も計測し全身的なグルコース濃度は変化しない条件であることを確認する。昨年度明らかになった通り、グルコース負荷だけでなくインスリン負荷についても試み、グルコース濃度の変化が計測できるか検討する。高濃度のグルコース注入は皮膚に炎症等が残る可能性もあるため、実験後1週間程度刺入部位の観察を行う。 (2) 糖尿病モデルマウスを用いた有用性評価では、糖尿病モデルマウスとして、インスリン抵抗性を主因とするⅡ型糖尿病モデルマウスであるKKマウスおよび、ストレプトゾトシン投与によるⅠ型糖尿病モデルマウス(インスリン分泌不全が主因)それぞれ5匹以上において局所糖負荷試験を行い、従来のインスリン抵抗性評価法の1つであるインスリン負荷試験の結果との相関性を評価する。 (3) グルコース濃度計測用センサについては、健常マウスを用いた局所糖負荷試験の計測結果を元に計測範囲を設定し、連続測定可能なセンサの作製を行う。作製したセンサを用いて、マウスへの局所糖負荷前後のグルコース濃度の連続計測を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算に対して支出額で誤差があったため。次年度の物品費(消耗品、動物実験用器具等)として使用予定
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