本研究では、インスリン抵抗性評価の新たな手法として局所糖負荷試験を提案し、それに使用する2本の流路が作製された針の作製、評価を行った。 局所糖負荷試験に用いる針として、外径0.2 mmの極細径ステンレス製鍼灸針の表面に、生体適合性ポリイミド製の2本の流路を作製した。1本はグルコース注入用流路であり、針を皮膚に刺入後、局所に微量のグルコース溶液を注入するために用いる。もう1本の計測用流路は、根本側から針先で折り返し、根本側に戻るような構造となっており、針先部分のみに微小穴が多数空いている。この流路に生理食塩水を流すことで濃度拡散により皮膚中のグルコースを回収する。 本年度は、作製した針のブタ摘出皮膚を用いた評価を行った。注入用流路からグルコース溶液を注入する際に必要な注入圧を計測するため、ブタ皮膚に針を刺入した状態で注入圧および還流圧の計測を行った。注入量が一定の場合、流量に対して注入圧はほとんど変わらず、流量が一定の場合は注入量に応じて注入圧は増加した。また、微小還流における還流圧については、流量に応じてほぼ線形に還流圧は増加した。流路壁による圧力損失は流速すなわち流量に比例して増加することから、注入の際に必要な注入圧は流路損失よりも皮膚組織にグルコース溶液を押し出す力の方が十分に大きかったと推測される。逆に、還流に必要な圧力は流量に比例しているすなわち流路損失に依存して変化していることから、先端部の微小穴から組織への還流液漏れはほとんどなかったと考えられる。 注入および回収機能の評価として、針先をブタ摘出皮膚に刺入した状態で、グルコース注入前後の皮膚中グルコース濃度を微小還流により計測した。グルコース濃度を一定として注入量を変化させた場合も、注入量を一定としてグルコース濃度を変化させた場合も注入したグルコース量に応じてグルコース濃度が変化することが確認できた。
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