研究実績の概要 |
2018年度はバイオフィルム形成阻害効果について、超音波照射条件を様々に変化させて検討した。 超音波照射強度が10~20mW/cm^2と小さくても、長時間(24時間12時間)照射によってバイオフィルム形成阻害効果が認められた。 短時間照射においては、先行研究である骨芽細胞に対する超音波照射研究をもとに超音波照射条件を設定した。(周波数1MHz, Duty比20%, パルス繰り返し周期(PRT)10ms, 印加電圧5Vpp, 照射時間1200秒)表皮ブドウ球菌の菌液にSound Cell Incubator(MU研究所製)を使って上記条件で超音波を照射した。菌液準備後1時間後の1回照射とその後3時間後の2回照射を行った。超音波照射によるバイオフィルムの減少率は、2回照射で33.6%、1回照射で17.9%であった。短い時間の照射でもバイオフィルム生成の初期段階に照射すれば、バイオフィルム生成阻害効果が期待できた。すなわち、細菌のwell底面への付着が超音波の振動によって妨げられていることが示唆された。また、超音波照射前後で菌液内の細菌数に変化はなく、超音波照射によって細菌そのものは死滅しない、あるいは死滅した菌と超音波照射によって底面から剥離して菌液中に浮遊した菌が相殺されているためと推測した。 次に、超音波照射条件のパラメーターのうちいずれがバイオフィルム形成阻害に影響しているのかを検討した。超音波強度を一定にし、Duty比を変化させたシーケンス、PRTを変化させたシーケンスでバイオフィルム形成阻害効果を比較した。PRTが一定のときはDuty比が高いほうが、Duty比が一定のときはPRTが短いほうがバイオフィルム阻害効果が大きい傾向にあった。すなわち、超音波照射強度が一定であれば連続波に近い超音波照射条件のほうが効果が大きいということが示唆された。
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