本研究の目的は、癌温熱療法(ハイパサーミア)用の全く新たな治療装置を開発することにある。具体的には、患者の体に傷をつけずに深部癌の加温治療および温度分布の「見える化」が可能な、革新的な完全非侵襲癌治療装置を開発する。本研究課題の最終目標は、申請者らが培ってきた、非侵襲加温、温度計測技術を融合させた、全く新たな癌治療装置を開発し、癌の撲滅に寄与する新規ハイパーサーミアシステムを構築することにある。 令和2年度までに、既存の温度計測プログラムの改良を行い、各種画像解析条件および熱定数をディープラーニングによって決定し、一連の温度計測をユーザーの経験によらずに行う手法の構築を行った。また、空胴共振器加温システムおよび非侵襲温度計測技術の融合を行い基本的な計測精度を把握した。 最終年度にあたる令和3年度には、より臨床に近い検討を行うため、ヒトの膝型寒天ファントムを用いた検討を実施した。膝型寒天ファントムは健常者の連続した2次元医用画像から再構築したものであり、内部には3Dプリンターによって作製した骨モデルを内包している。膝関節は複雑な形状であるため、超音波画像を撮像するために多軸ロボットアームを用いた。これらを用いた加温実験から、超音波画像による温度計測結果とFEM解析結果およびサーモ画像による計測結果に傾向の一致が見られ、本温度計測手法の有用性を確認した。また、温度計測手法のさらなる改良を実施し、より簡便かつ確実に温度計測を行う手法の構築を行った。
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