“付け爪”を応用した皮膚に触れないウェアラブル心拍センサを開発し、在宅医療用遠隔モニタリングデバイスとして実用化する事で、在宅医療の向上に寄与することが本研究の目標である。爪には、心拍に同期した微小なひずみが存在しており、この微小ひずみを圧電フィルムにより脈波信号に変換することができれば、センサ素子へのエネルギー供給なしに脈波を取得することができる。今年度の実績として、これまでに開発したプロトタイプに対して通信方式の変更を行った。これまでに男性の手の親指の爪サイズのプロトタイプを開発していたが、独自に構築した通信規格を用いていたため、専用の受信機にて受信する必要があった。この通信規格をBluetoothに変更することができれば、身近なスマートフォンやタブレット端末との接続が可能となることから、今年度は小型Bluetoothモジュールのファームウェア開発および、タブレット端末側のアプリ開発を行った。開発の成果として、脈波の送信に成功し、プロトタイプへの実装を進めている。また、ゼロパワーセンシングは、被験者により計測が困難であるケースが明らかとなっており、指先や爪、血管走行の個人差が原因と予想されている。この問題を解決するための基盤づくりとして、被験者の指先の内部構造をモデル化する取り組みを行った。具体的には被験者の指先の断層画像を撮影し、この画像の解析から内部組織の3次元分布の取得することに成功した。この情報を基に3Dモデルを構築、数値解析により爪に生じる微小ひずみの発生メカニズムを明らかにできれば、被験者によらずより安定した計測の実現に寄与することができる。
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