研究課題/領域番号 |
18K18411
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
堀内 哲也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (60738061)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 調節可能眼内レンズ / 白内障 / イオン導電性高分子アクチュエータ / 焦点距離 / 高次収差 |
研究実績の概要 |
研究は、白内障治療用の眼内レンズに関する研究である。従来の眼内レンズは、単一、または2~3焦点の、焦点距離が固定されているレンズであった。しかし、単焦点レンズでの生活は老眼鏡の着用が必須、多焦点レンズではハローグレア現象という、夜間の視野に顕著な問題が発生する。そこで我々は、人間の眼のように焦点距離が調節可能な眼内レンズを開発しており、その駆動力にイオン導電性アクチュエータを用いていた。 臨床応用における課題はいくつかあるが、その中で2つ、従来研究からの課題があった。一つは実験上の課題であり、ゲルレンズに生体豚の摘出眼を用いているため、実験の再現性を取ることが困難であったこと。もう一つはアクチュエータの形状故に、得られる画像に6次の高次収差(乱視)が発生してしまったことである。 本年度は本来は研究のまとめの時期であったが、新型コロナによる出勤制限に加え、我々の共同研究者は医療従事者である。更に我々は大阪勤務で先方は東京勤務であった。なので先方とオンラインで相談し、今年は出張・実験せずに2021年度に全研究費を繰り越し申請することで合意し、昨年度成果の論文投稿のみを行った。完全人工物化シリコーンゲルレンズを開発し、更に6次収差を2次収差に落とし込むまで成功した。そして実験の再現性を担保した上で±1.5V印加で±0.23Dの焦点距離変化を確認した。 現在は査読修正済みであり、近日中にアクセプト通知がくると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナの状況と、共同研究者が医療従事者であるということから、昨年度は研究費に手を付けず、2021年度に全額繰り越し申請したため。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画にはなかったが、現在、東京工業大学の藤枝教授よりナノ薄膜を提供して頂く手はずになっている。 我々の論文では常に生体適合性の指摘を査読者より受けていた。藤枝教授は生体適合性のあるナノ薄膜の大家で、ナノ薄膜で包んだ電子回路をマウスに埋め込んで生存させることに成功している。本来、電子回路のような人工物を生体に埋め込めば炎症反応が発生するが、表面のナノ薄膜が適合性を有するために炎症を抑えているという成果である。 この薄膜で我々のアクチュエータを包めば同じく炎症が発生しない見込みであり、そちらを成果として挙げたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ蔓延で、且つ共同研究者が医療従事者であったために2020年は活動を見合わせていたから。
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