研究課題/領域番号 |
18K18413
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
清水 公子 東京大学, 医学部附属病院, 登録研究員 (50814688)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 光干渉断層計 / 慢性中心性漿液性網網脈絡膜症 / マイクロペリメトリーMP3視野計 / 網膜視細胞層 / 網膜色素線条 / 網膜感度 |
研究実績の概要 |
網膜疾患を有する患者に視機能評価系マイクロペリメトリーMP3視野計(ニデック社)を用い網膜感度を測定し、光干渉断層計(OCT)や眼底自発蛍光などの網膜画像所見を重ね合わせることで、網膜構造と網膜機能(網膜感度)の関係をより精密に解析できることを目的としている。まずOCTを用いた網膜構造のより詳細な研究を行った。これまで網膜の中でも特に網膜視細胞層は、他の網膜層に比べ視機能と強い関連があることが報告されてきた。我々は慢性中心性漿液性網脈絡膜症(CSC)患者の剥離網膜において、OCTを用い視細胞層を外顆粒層と外節層に分け、視機能との関連をみた。その結果、外顆粒層および外節の長さはともに視機能と強い正の相関がみられたが、多変量解析により外節がより視機能に影響をおよぼしていることが判明した。(Retina. 2019 ELONGATED PHOTORECEPTOR OUTER SEGMENT LENGTH AND PROGNOSIS OF CHRONIC CENTRAL SEROUS CHORIORETINOPATHY.)。 また網膜色素線条症例に合併する黄斑部の網膜萎縮性変化をOCTにより評価し、MP3による黄斑部の網膜感度との関連を検討した。平均網膜感度は網膜色素上皮萎縮およびelipsoid zoneの途絶を認めない領域では24.2dBであった一方、網膜色素上皮萎縮領域では2.9dB、elipsoid zoneの途絶領域では11.4dBと低下していた。また色素線条の症例でも周辺にreticular pseudo drusen(RPD)を伴う症例ではより広範囲な網膜萎縮と感度低下を認め、とくにRPDのある網膜部位はない部位にくらべて網膜感度が低下していた。(2018年臨床眼科学会)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の視力検査では視機能は中心窩での評価しかできなかったが、網膜色素線条症例においてMP3を用いた視機能評価を行ったところ、中心窩視力が落ち固視不良となった患者でも網膜のより広範囲にわたる視機能を正確に評価することができた。また網膜色素上皮萎縮領域と、elipsoid zoneの途絶領域、RPDのある領域と、異なる部位での感度の差を示すことができた。これらの結果は、網膜構造と視機能との関連をより把握することにつながると考えられる。 chornic CSCにおいては、病勢の活動性がある時期に、視細胞層を2層に分けて視機能との関連を調べた。沈静化したCSCでは似たような研究がされてきたが、剥離をしている状態での検討は行われていなかった。網膜を細分化して調べ、視機能をより鋭敏にとらえる網膜パラメーターを知ることができ、今後網膜構造と視機能との関連を解明するのに役立つと考える。
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今後の研究の推進方策 |
BVO後の黄斑浮腫に対する抗VEGF硝子体治療施行前後に、MP3による視野計測を施行し、視機能を最も反映する網膜構造の検定結果をまとめている。また従来の視力やOCTでなく、MP3網膜感度の低下を指標に抗VEGF硝子体注射を行い、その予後を検証したいと考える。 網膜色素線条症例においては症例を追加し、網膜構造および視機能だけではなく、脈絡膜新生血管との関連も検討する。 またポリープ状脈絡膜症において、OCTおよびOCTangiographyを用い、光線力学療法後の網膜構造および網膜脈絡膜血流の変化を評価している。今後はこれに視機能評価も合わせて研究したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加費、旅費が当初予定していたより少なくてすんだ 現在投稿中である論文の投稿費、国内および海外学会参加費に使用予定
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