中性脂肪蓄積心筋血管症(Triglyceride deposit cardiomyovasculopathy: TGCV)は2008年,我が国の心臓移植症例より見出された新しい疾患単位である.厚労省研究班の報告による剖検心のスクリーニングからは我が国の潜在患者数は4-5万人と推定されており予後不良である.TGCVは長鎖脂肪酸の代謝異常から重度の心不全などを呈する難病である.放射性長鎖脂肪酸であるI-123 BMIPPを使用した心筋脂肪酸代謝シンチはTGCVの病態の根幹を表現する検査と考えられている.本研究ではTGCVの診断を目的とした心筋脂肪酸代謝シンチにおいて最適収集方法,評価方法の検討,再現性の評価ならびに異なる装置間での収集方法の標準化を行ってきた.その結果,従来の平面像の洗い出し率算出では誤差が大きく,バックグランド補正を行わない方法では誤差が小さいことが分かった.一方、SPECTに関してはエネルギーウィンドウやピクセルサイズ,コリメータなどの収集条件と洗い出し率は依存せず早期像と後期像で同じ条件で収集を行うことが最も重要であることが確認できた.一方,早期像と後期像の収集体位が異なることや心軸や心基部,心尖部の設定など解析条件が不一致になることなど洗い出し率の誤差が現れ,不一致の程度が大きくなることにより洗い出し率の誤差も大きくなることがわかった.また,I-123心筋脂肪酸代謝シンチとTl-201心筋血流シンチの二核種同時収集に関しては,ガンマ線がコリメータにあたって発生する特性X線による影響のため,各臨床症例において心筋や肝臓などの周辺臓器の集積が異なることから二核種同時収集におけるクロストーク補正を行って洗い出し率を適正化することは難しく,洗い出し率が過大評価されることも認められた。
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