研究課題
近年、核酸医薬品の1種であるアンチセンス医薬の開発が目覚ましい進展を遂げており、既に5品目が上市されるなど高い有用性が認められている。一方で、安全性に関しては、ヒトでの臨床試験で自然免疫活性化が要因と考えられる有害事象が認められ開発中止となった品目が存在するなど、多くの問題点がある。アンチセンス医薬品による自然免疫活性化は、Toll様受容体9(TLR9)を介すると考えられてきた。しかし、既存のTLR9活性化を指標とした評価法で確認されているにも関わらず、複数の開発品が臨床試験において自然免疫活性化が要因で開発中止となっている。本事実を受け研究代表者はこれまで、アンチセンスを認識するTLR9非依存的な経路が存在し自然免疫系の活性化に寄与していることを実験的に示し、TLR9非依存的経路に関する評価法を構築する必要性を示した。そこで本研究では、アンチセンスによるTLR9非依存的経路を介した自然免疫活性化の機序を解明し、TLR9非依存的な自然免疫活性化の評価法を構築することを目的とする。具体的には、TLR9非依存的経路でアンチセンスを認識する核酸認識受容体を同定し、評価法として当該受容体の活性を簡便・簡潔に評価可能な評価用細胞株を作成する。本手法の構築により、開発段階でヒトでのアンチセンスによる自然免疫活性化に起因した有害事象の予測確率が向上し、アンチセンス開発の迅速化・効率化の向上に繋がると考えられる。当該年度は、TLR9非依存経路を介した自然免疫活性化の評価指標を選別するための網羅的解析を行い、評価指標の候補となるサイトカインを複数種類同定した。
2: おおむね順調に進展している
上述したとおり、当該年度はTLR9非依存経路を介した自然免疫活性化の評価指標となるサイトカインの同定を完了した。TLR9非依存経路を介した自然免疫活性化の評価指標を決定するために、独自に設計したTLR9を活性化させない数百本のアンチセンスをヒト末梢血単核細胞に作用させ、その際のサイトカイン産生を網羅的に解析した。本解析により、アンチセンスによるTLR9非依存経路を介した自然免疫活性化の評価指標の候補となる複数種類のサイトカインを選別した。同定したサイトカイン遺伝子の上流分子を調べることで、アンチセンスの認識のKeyとなる受容体の絞り込みを進めている。
当初の計画通りアンチセンスを認識する核酸認識受容体、および評価用細胞として用いる細胞種の選別を進める。当該年度の解析で用いたヒト末梢血単核細胞は単球、樹状細胞など様々な免疫系細胞で構成されている。そこで、この中から同定したサイトカイン産生の中心を担う責任細胞種を同定し、評価用細胞株として用いる細胞種を決定する。同定した細胞種を用いて、サイトカイン産生における核酸認識受容体の寄与を解析し、アンチセンスを認識する核酸認識受容体を同定する。本解析が完了次第、TLR9非依存的経路でアンチセンスを認識する核酸認識受容体の活性を評価する評価用細胞株を作成を進める。
本年度実施した解析については、当初予定した費用内で実施することができたため、わずかではあるが次年度使用額が生じた。次年度使用額については、2019年度に実施する「評価法で使用する責任細胞種の同定」における試薬類等に使用する予定である。
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