研究課題/領域番号 |
18K18422
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研究機関 | 千葉県立保健医療大学 |
研究代表者 |
藤田 佳男 千葉県立保健医療大学, 健康科学部, 准教授 (40584206)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 有効視野 / 自動車運転 / 高齢者 / 脳損傷者 |
研究実績の概要 |
1年目にVFIT-CとVFIT従来版(改良前のソフトウェア)の2つの検査を20代の健常者で実施した結果、一定の併存的妥当性が検証され、対象者に課題が判り易く、かつ練習時間が短縮できることが明らかになった。また、検査時間を従来の半分程度に出来ることや、一定の条件下であれば集団検査でも実施の可能性が見えてきた。しかし、20代では課題難易度に関わらず全てのStageで平均正解率が97%を超えるなど、半数程度の対象者の検査結果に天井効果が認められた。そこで2年目は30代での健常者での天井効果がどの程度か、および運転再開を希望する脳血管障害者を中心とした脳損傷者の一部に認められる臨床検査では検出できないほどの軽度の視覚的認知機能低下(軽度半側空間無視や、軽度全般的注意障害)がこの検査方法で検出可能か否かを明らかにするため、30代以上の健常者および、脳血管障害などの疾患を持ち、運転再開を希望する者を対象としてデータ取りを行うこととした。 その結果、健常者については、30代7名を対象者として実験を行ったところ、正解率の平均はすべてのStageで97%程度となり、20代と同様に天井効果が認められた。これは、VFIT従来版でも20代と30代の平均正解率は85%程度で殆ど差はなく、40代から成績の低下を認めるため、課題難易度の違いはあるものの同様の傾向が認められた。但し今回の対象者は比較的視覚的認知機能が高いとみられる対象者を多く含んでおり、結果の解釈には注意を要する。次に運転再開を希望する脳血管障害者50代を中心に協力施設での検査を行ったところ、運転適性に関連する神経心理学的検査の成績との間に相応の関係が認められた。また、平均正解率は70%前後であり、天井効果は認められなかった。以上のことから、VFIT-CはVFIT従来版に置き換えられる可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は複数の原因によりやや予定より進捗が遅れている。1年目は、脳血管障害者の運転適性評価法として実績があるVisual Field with Inhibitory Tasks(以下VFIT:ブイフィット)の高齢者向け改良版VFIT-Colored(以下VFIT-C)の妥当性検証を実車評価により行うことを計画していた。しかし、高齢者の事故が数多く報道されること等が影響し、従来研究対象者を募っていたシルバー人材センターが、運転に関する協力を辞退されるようになり、首都圏で引き受けて頂けるところが殆どなくなった。それゆえ、今回の研究では実車成績を基にした妥当性検証を断念し、従来版VFITとVFIT-C双方を健常者に実施し、並存妥当性を検証する方法に変更した。1年目で若年者を対象とした研究は適切に実行でき、一定の並存妥当性は確認できた。しかし、若年者の平均正解率は97%程度と非常に高いため、それ以上の年代のデータや脳血管障害者などのデータで検討することとした。しかし研究代表者の家族の入院等により、研究に時間を費やすことが困難な時期が6か月ほどあったため、データ取りを行うことが出来なかった。この対策として協力施設にデータ取りを依頼し、予定の2割程度のデータを得ることが出来た。研究を再開し、機関の倫理審査の延長承認を待って2020年2月より実験を再開したが、新型コロナウイルス感染症の影響により実験を行うことが困難になったため延長申請を行った。
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今後の研究の推進方策 |
VFIT検査はその性質上、臨床場面で行う通常の神経心理学的検査と同程度の接触を必要とする。昨今、高齢運転者に限定免許制度の創設が行われるなど風当たりは強くなっており、実車評価に基づいた妥当性研究は今後も困難と予測される。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響で現時点では机上実験が再開できる目途も立っていない。本来であれば今年度は健常者の30代から上の年代別データを得たいと考えていたが、社会状況が現状のままでは研究代表者自身で実験を行うことには困難が予測される。もし、研究代表者自身が実験を行うことが困難である場合は、VFITが既に活用されている施設にVFIT-Cを渡し、研究協力者に委託費を支払って実施する方法が考えられる。その場合はその他の検査等は実施せず、VFIT-Cのみに実験を絞ることで一回の実験時間を短縮し、多くの協力施設での実施を狙うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は今年度で終了する予定であったが、研究対象者の募集が予定通り進まず、十分な実験を実施できなかった。それゆえ本来であれば支払うべき謝金等を使用していない。最終年度は残している実験を行い謝金(研究対象者および研究協力者)への適切な支出を行う。また、成果発表の準備の為の支出を行う
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