最終年度はCovid-19の影響がやや落ち着き、ようやく高齢者を対象とした研究が再開できる環境となったが、道路交通法の改正により違反を起こした高齢者に運転技能試験が開始されるなど、高齢運転者への社会の目は厳しくなる一方であった。それゆえ近隣にある複数のシルバー人材センターに打診したものの実車を用いた研究は実施のめどが立たなかった。そこで当初第2研究「健常高齢者の認知機能と実車評価の関連」で目的としていたVFIT-C(カラー版)の妥当性検証はVFIT(従来版)との並存妥当性の確認までとした。また、第3研究で行う予定であった縦断研究(VFITの訓練効果)についても、Covid-19の影響により、週5回の訓練プログラムを受け入れる施設(介護予防等を行う施設)を見つけることができなかった。そこで、教育では行動変容が困難であり、自動車の運転をやめざるを得ない対象者に代替交通手段を提案する際の目安となる基準の資料作成に方針を変更した。すなわち研究対象者を自家用車の運転者に加えて自転車利用者まで広げ、認知機能や注意機能および運動機能等を調べることで、臨床場面で指導の参考となる値を得ることを目的に実験を実施した。対象者は都市部及び郊外の高齢者とし、基礎的認知機能としてMoCA-J、注意機能としてTMT-J、およびWAIS-Ⅳ符号課題、運動機能として握力、体前屈、バランス等を測定した。加えて質問紙による主観的QOLを加え、自家用車を利用するもの、自転車を利用するもの、公共交通機関を主に利用する者のデータを取得した。まだデータは取得中であるものの、自転車を利用する者と自家用車を利用する者の運動機能に大きさ差はなく、認知機能の一部に差がある可能性が認められた
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