当該年度では、冷却刺激部位による生理学的影響の違いを実験により明らかにした。先行実験では対象者の頸部に対して冷却刺激と加熱刺激を行い、睡眠変動を評価したところ、刺激なしと比較して状態を増減させた。本年度で、部位刺激時における生体への影響の差異が明らかになれば、睡眠変動をコントロールするための適切な刺激部位や呈示条件を求めることができ、次年度より無意識下生体制御技術の開発に着手することができる。実験の結果、手背部および頚部冷却においては、鼻部皮膚温度の下降期間が長く、交感神経系活動を亢進傾向としたが、背部冷却おいては鼻部皮膚温度上昇が早く現れ、交感神経系活動が抑制傾向に転じやすいことがわかった。また、発汗量においては手背部および頚部と比較して、背部の発汗は非常に小さく、部位間に差異があることがわかった。刺激呈示を行わなかった場合、鼻部額部温度と手掌部の温度が上昇傾向となり、全体的に交感神経抑制傾向となったことから、背部冷却刺激時の鼻部額部温度と手掌部温度は無刺激時の変化に近い傾向を示したと考えられる。頸部皮膚温度については、刺激呈示なしの場合、緩やかな上昇変化ののちに下降傾向となったことから、頚部冷却によって初期の温度上昇を抑制することがわかった。発汗量を刺激呈示の有無で比較した場合、部位冷却時の方が少なかったことから、皮膚温度上昇を抑えたことが要因と考えられる。本研究成果の一部は電気学会計測研究会にて発表を行った。
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