初年度に現在明らかにした部位刺激時の体温と皮膚表面温度と熱放散に関する生体機序の関係に基づいて、刺激部位と呈示条件を再検討し、先行実験で試作したコントローラに許容制限を反映した。交感神経活動を反映する鼻部皮膚温度を利用して一過性覚醒低下を抑制するシステムを構築し、眠気の抑制効果を評価した。まず、予備実験で誘眠課題と集中課題を実施し、精神性発汗と温熱性発汗が抹消温度と覚醒低下に及ぼす影響について再評価した。また、帯域幅等を制御した光が眠気に与える影響について併せて評価を行った。頸部の温度上昇にともなって発汗量も上昇すること、また眠気喚起にともなって変化する発汗量と温度上昇には異なる傾向があることを確認した。帯域幅や色印象を制御した光が心理や生理に影響を与えることも実験結果から示唆された。次に、被験者の実験開始時の覚醒レベルが低くならないようサーカディアンリズムの影響を考慮し、午前中に睡眠介入効果実験を実施した。実験の結果、心理面では非制御時よりも制御時の方が有意に主観的な眠気を抑えられることを確認した。特に、頸部の皮膚温度には顕著な違いが表れ、頸部冷却刺激によって熱放散を抑えていることを確認した。HFのPSDは制御時の方が非制御時よりも変動が小さくなることも確認した。一方、頸部発汗量は、皮膚温度による熱放散を補完するかのように制御時の方が非制御時よりも多くなった。手背部および鼻部の皮膚温度の変化は制御・非制御において差異はみられなかった。以上の結果から、外部刺激により主観的な眠気を抑える効果が一定期間認められるものの、他部位における熱放散量は抑えられていないため、その効果は限定的となる可能性を示唆した。
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