研究課題
糖尿病者(DM)群19名,健常者(healthy control: HC)群27名に対し,従来の嗅覚同定検査(Open Essence)とペンギンシステム社が開発した検査装置を用いた嗅覚検査を行った.嗅覚検査装置は5種類の嗅素の検知(何か匂っているのが分かる)と認知(何の匂いか分かる)を測定するもので,匂いは4~6段階に希釈されている.1種類の匂いにつき薄い濃度から濃い濃度に順番に嗅いでもらい,被験者が検知あるいは認知ができる濃度を同定した.最も濃い濃度で認知の回答が出来ない場合は,匂い語表から選択してもらった.心理検査は,Moca-J,Trail Making Test A/B (TMT-A/B),WMS-Rの論理的記憶Ⅰ/Ⅱ,やる気スコア,簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)を施行した。運動検査は、握力,片脚立位検査,姿勢安定度評価指標(IPS),修正IPS(mIPS)を行った.2群の比較では,嗅覚の検知は5種類全てにおいてDM群が有意に低値であった.さらに、DM群では、TMT-A/B,やる気スコア,QIDS-J,片脚立位時間,mIPSが有意に低値であった.嗅覚検査と他の検査結果の相関を検討すると、対象者全体では、桃の缶詰の匂いの検知とMoca-Jとの間に負の相関,TMT-Bとの間に正の相関がみられた.DM群では、桃の缶詰の匂いの検知と論理的記憶Ⅰ/Ⅱとの間に負の相関,TMT-Bとの間に正の相関がみられた.以上から,DM群はHC群に比して、嗅覚の検知,実行機能および意欲などの前頭葉機能,バランス機能が有意に低下することが明らかとなり、DMが認知症のリスク状態であることが示唆された。さらに、対象者全体およびDM群において、嗅覚の検知と記憶や実行機能を主とした認知機能とに関連がみられたことから,嗅覚検査装置による検知検査は認知機能低下の早期スクリーニングに有用である.
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