研究課題/領域番号 |
18K18448
|
研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
山田 幸生 電気通信大学, 脳・医工学研究センター, 客員教授 (10334583)
|
研究分担者 |
小池 卓二 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (10282097)
丹羽 治樹 電気通信大学, 脳・医工学研究センター, 特任教授 (20135297)
牧 昌次郎 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (20266349)
西村 吾朗 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (30218193)
道脇 幸博 昭和大学, 歯学部, 兼任講師 (40157540)
|
研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
|
キーワード | 誤嚥検査 / 咽頭残留 / 蛍光食品 / 高感度蛍光検出 |
研究実績の概要 |
蛍光食品を用いた非侵襲誤嚥検査法の開発に向けた研究において,初年度はまず生体模擬試料(牛肉ファントム)を用いて予備実験を行い,生体内部の蛍光体からの蛍光計測に関する最適条件や蛍光薬品(ICG)を混入させた食品(ICG食品)の作製法などを確立し,その後,ヒトを用いた実験に対する倫理審査委員会の承認を得てヒトでの実験を行った.健常高齢者2名を被験者として,嚥下内視鏡検査を行いながらICG食品を摂取する実験も行って,咽頭内へのICG食品の滞留と蛍光計測との強い相関を得ることができ,蛍光食品を用いた非侵襲誤嚥検査法の原理を検証することができた.ただ,前年度の計測では,蛍光強度の時間変化をリアルタイムでグラフ化することができなかったため,データ処理に時間がかかるなどの欠点があった.本年度は,ヒトでの蛍光計測の迅速化を図るため蛍光計測装置の改良とリアルタイムで蛍光強度の時間変化を可視化するためのデータ処理法の開発を行った.また,室内灯や室外からの太陽光などが計測に影響することが分かったため,それらの影響を大幅に低減する光プローブの改良も行った.しかし,改良した計測装置やデータ処理法を用いて計測を行ったところ,前年度に行った健常高齢者での計測結果を再現することができないという状況に陥った.改良した装置の性能に変化は無いと考えられたため,光プローブの頸部への接触状態や接触位置の適切性を種々検討したが特に問題は見つからなかった,その結果,立ち返って牛肉ファントムを用いて計測システム全般の見直しを行った.牛肉ファントムを用いた予備実験の結果は以前と同等にすることができたので次年度にヒト実験を再開することとした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
初年度に健常者2名でヒト実験を行い,蛍光食品を摂取した際に咽頭部に残留した蛍光食品からの蛍光を頸部に押し当てた光プローブで計測することができ,本手法の有効性を確認した.しかし,計測結果の表示などに改良の必要性が認められ,嚥下障害患者での被験者実験には適切でなかったため,計測装置,光プローブ,および計測結果の表示法を改良した.その後,健常者でヒト実験を行って再現性を確認する予定であったが,改良した計測システムを用いたヒト実験で以前のような結果を再現することができなくなった.再現できない原因を色々と検討したが,初年度に行った牛肉ファントムでの予備実験に立ち返って計測システムの性能評価を行うこととなった.性能評価の結果には特に問題が無かったためヒト実験を再開することしたが令和2年3月以降の新型コロナウィルス対応により実験再開は次年度に持ち越しとなった.健常者を被験者としても初年度の結果を再現できず,その結果,嚥下障害患者を被験者として実験を行う予定であったが全く行うことができず,遅れていると判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
改良した計測システムを用い,まず健常者を被験者とするヒト実験で計測データの再現性を確立する.これまでに被験者実験を健常者2名に対して行ってきたが,さらに被験者実験を拡大して,5名の健常者と5名程度の嚥下機能が低下した患者で実施する.また,観測された蛍光が頸部のどのから発生しているのかを特定するために,嚥下内視鏡検査と嚥下造影検査に加え,頸部の詳細な解剖学的情報を得ることができるX線CTを用いることも検討する. 蛍光測定,嚥下内視鏡検査などの結果を総合し,誤嚥リスクの危険性を定量的に評価する指標などを作成することを目指す.また,扱いやすい光プローブや装置の開発方針を決定し,企業との連携を探りたい.
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度の年度末に向けてヒト実験を実施し,本年度で2年間の研究を終了する予定であったが,本年3月に実施する予定の実験や打ち合わせおよび報告会が新型コロナウィルス対応で中止せざるを得なくなった.そのため,1年間の延長を申請した.予算残額は多くはないが最低限のヒト実験を行うことができるため,研究計画の遅れを取り戻す予定である.
|