長期療養施設に入所中の高齢者にとって、下肢慢性浮腫は本人のwell-beingに影響を与える健康障害である。本研究の目的は、下肢慢性浮腫の症状緩和として実施する弱圧での圧迫療法とwell-beingについて症例研究を行った。 症例は、長期療養施設に入所し、慢性下肢浮腫を有する65歳以上の高齢者5名であった。症例に3週間毎日圧迫包帯を共同研究者が実施した。圧迫療法は10mmHgから開始し、浮腫の状況と安全性に考慮しながら、20-30mmHgまで徐々に増加した。高齢者のwell-beingの評価として、下肢の状態を尋ねるインタビューを実施した。また、施設の看護職員または介護職員に、患者の日常生活の変化、意欲などwell-beingに関する半構造化面接を行った。インタビュー内容から、well-beingに関する内容を抽出し、Ryff(1989)のwell-beingの6つの概念をフレームワークとして用い分析した。浮腫の変化として、足背、足首、下腿部の周囲径をメジャーで共同研究者が測定した。本研究は倫理審査委員会の承認を得て実施した。なお、安全の保障のため、主治医から圧迫療法の許可を得、かつ週1回心エコーによる心不全評価(%FS、下大静脈径に)を行った。 浮腫の変化は、対象者5名全てに足背、足首、下腿部いずれかの部位で浮腫の軽減効果が得られた。well-beingの変化は、4名において「人生における目的」「自律性」「自己受容」「積極的な他者関係」に認めた。 以上から、下肢慢性浮腫を有する高齢者に10-30mmHgの範囲で圧迫療法を行うことで、浮腫の軽減だけでなく、well-beinが向上することが示唆され、高齢者への積極的介入の意義があると考える。
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